2024年 10月 13日(日)9:30〜12:10 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 長かった今年の夏もようやく終わり、朝晩は長袖が必要な気候になってきました。それでもこの日は雲一つない青空の下、気温がぐんぐん上がって名古屋の最高気温は28.5℃を記録しました。多少の暑さを感じながらもカラッと乾いた空気の中での気持ちのいい観察会となりました。 この時期、テレビのニュースで各地の満開のヒガンバナが紹介されているのを見かけますが、平和公園のヒガンバナも見ごろを迎えています。ヒガンバナには種ができず球根で増えるという説明を聞きました。オタマジャクシ池のショウブの葉にウンモンオオシロヒメシャクがとまっていました。スイカズラを食草とするシャクガの仲間です。
2年前にたった一株を保護したオオオナモミは、今年驚くほど増えて数えきれない実をつけていました。そのオオオナモミの葉の裏には、たくさんのグンバイの仲間が見られ、のちにアワダチソウグンバイとわかりました。よく見るとその幼虫も集合した状態で動いていました。アワダチソウグンバイは1999年が日本初記録と言われ、比較的新しい外来種のようです。
水路の脇にジュズダマが実をつけていました。まだ緑色の若い実のほかに、白っぽい実や黒っぽい実が見られました。白い実と黒い実を水に落とすと白い実だけが水に浮かんで流れて行きました。
近くで「すごい毛虫がいるよ」との声が上がり、見に行くと水路の石の上でシンジュキノカワガの幼虫が歩き回っていました。近くには食草であるシンジュの木は見当たらず、なぜそこにいたのかは不明ですが、取り急ぎ一番近いシンジュの葉に運びました。するとその同じシンジュではほかにも複数の幼虫が見つかりました。シンジュキノカワガは南方系のガで、名古屋の冬の寒さでは越冬できないと言われてきましたが、毎年のように幼虫や蛹の抜け殻を見かけるので、どこかで越冬できているのかもしれません。
シンジュの木にはカナムグラが巻きついていました。カナムグラの茎には固い棘があって不用意に触れるとひっかき傷ができそうですが、よく調べると棘はすべて下向きに生えているので、その向きに逆らわずに触れれば全く痛みを感じませんでした。
畑に移動してラッカセイが栽培されているところを見せてもらいました。ラッカセイは花が終わると花の柄が地面に向かって伸び、地中に潜って実をつけると聞いたことがありますが、実際に見るのは初めてという参加者がほとんどでした。子どもたちに聞いてみると、殻付きのピーナツを見たことがないと言っていました。
子どもたちがカマキリを捕まえて騒いでいました。いつもカマキリは子どもたちの人気の的です。同定の決め手となる前肢の付け根を見せてもらうとクリーム色だったので、オオカマキリであることがわかりました。畑ではそのほかコミカンソウも観察しました。コミカンソウの葉の様子からマメ科の羽状複葉のように思いがちですが、トウダイグサ科からコミカンソウ科に変更になった植物で、羽状複葉でもありません。
つどいの丘ではムクノキを観察しました。実がたくさんついていましたが、まだ緑のものばかりでした。黒く熟すと美味しいので来月の観察会では食べられるかもしれないと話しました。葉の表面のザラザラは裏面よりも顕著であるという感想も参加者から出ました。湿地の入り口ではキノコが集合して生えている場所があり、先月キノコを案内してくれた参加者が、また鏡を使って、傘の裏側のヒダを映し出してくれました。この日もキノコの仲間はたくさん観察できました。
湿地ではシラタマホシクサがまだたくさん咲いていました。シラタマホシクサは地球上でも東海地方のみに生息していて環境省の絶滅危惧種に指定されている貴重な植物です。白い小さな花が長い花柄の先に一つずつ咲いています。その花柄を人差し指と親指ではさんで下から上へスライドさせると、頂上の花が回転します。これは花柄がねじれているせいで、そのねじれは花柄が簡単に折れたりしないための仕組みであるとの説明を聞きました。
湿地ではそのほかサワシロギクやスイラン、サワギキョウを観察しました。いずれも数が少なく、貴重な湿地の植物です。
田んぼに移動しました。北側の水路の石にドロバチの巣が作られていました。中から出た形跡がないので、中でハチの幼虫が育っていると思われました。今後どうなって行くのか興味が湧くところです。ツマグロヒョウモンのメスがやって来て地面に降りました。これはもともと関西以西に分布していたものが徐々に北の方へ生息域を広げているチョウです。食草はスミレの仲間で、今年7月の自然観察会では畑のスミレで幼虫を観察しました。
田んぼでは次の土曜日に稲刈りを予定しているとのことでしたが、それにしてはイネの穂が頭を垂れていないとの参加者の意見が多く出ました。今年の猛暑の影響なのかどうかは分かりませんが、この田んぼの世話をしている参加者が収量を心配していました。
田んぼの周辺では、ボントクタデ、シソクサ、ハッカなどを観察しました。ハッカは葉をちぎって香りを確認しました。子どもたちがカエルに気づくとみんな夢中で追いかけていました。何匹かは捕まえられましたが、みんなヌマガエルでした。
この日は至るところでアベマキのドングリや殻斗が落ちているのを見ました。中には歩いている私たちの目の前に音を立てて落ちてくるものもありました。落ちているドングリはアベマキばかりで、コナラが落ちるには少し時期が早いとのことでした。
芝生広場の中ほどで、ヤママユの繭を拾いました。大きな穴が開いていて、中のガは出たあとでした。穴が繭のまん中に開いているので、成虫が出にくかったのではないかと推測する参加者もいました。そのそばで見つけたキノコの傘の裏側や柄の中に夥しい数の幼虫がひしめいていました。拡大してみると頭部が黒いのがわかりましたが、脚の有無などは小さすぎて確認できず、何の仲間の幼虫かを推測することはできませんでした。
観察会が終了する頃には10月とは思えない、汗ばむ気温になりましたが、柔らかく注ぐ秋の日差しの中で、たくさんの動植物を観察しました。何度同じコースを歩いても、必ず何かしら新しい発見に恵まれるのが自然観察会の魅力の一つです。
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