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2009年 > 8月度の観察記録
8月度の観察記録
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 終日曇り空で,日差しは全くありませんでした.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,まだたくさん白い花を咲かせており,水面の見える所もよく見ると,水中ではオオカナダモ(大カナダ藻,トチカガミ科)がいっぱいでした.その上を先月と同じようにチョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)が飛んでいました.先月と違うのは,赤とんぼもいたことです.水鳥は先月と同じようにいませんでした.センダン(栴檀,センダン科)の実は大きくなっていて,緑の表面がつやつやしていました.オシロイバナ(白粉花,オシロイバナ科)は,細長い花と黒い実が混在していました.アカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の雌木の花はすっかりなくなり小さな黒い実を付けていました.元清風荘の跡地ではタカサゴユリ(高砂百合,ユリ科)が白い大きな花を咲かせていました.集合場所では,クマゼミ(熊蝉,セミ科)の鳴き声が圧倒していましたが,アブラゼミ(油蝉,セミ科)とツクツクボウシ(つくつく法師,セミ科,別名:筑紫恋し)もわずかに鳴いていました.参加者は,先月より多く3名の子供を含む25名でした.

オシロイバナの花のつぼみと種 アカメガシワの実 タカサゴユリ

 まず,参加者が持って来たたくさんの蓑虫がついたギョリュウ(御柳,ギョリュウ科)を見ました.自宅の庭に大繁殖したそうです.他の庭木にはつかず,葉が食べやすいのかギョリュウだけに蓑虫がつくそうです.蓑の端から,幼虫が黒い頭を出していました.次に,小さな緑色の実のついたホルトノキ(ほるとの木,ホルトノキ科)の枝を見ました.何故,日本原種なのにホルトノキというような名前になったかという問いに,ポルトガルから来たオリーブの木と平賀源内が見誤ったという回答がでました.次に,3cm大の複数の重い実がついたモミジバフウ(紅葉楓,マンサク科,別名:アメリカフウ)の枝を見ました.丸い実の形は似ていますがスズカケノキ(鈴掛の木,スズカケノキ科,別名:プラタナス,モミジバスズカケノキ)とは違うという説明がありました.モミジバフウの実の表面はとがっているのが特徴のようです.3つ目に,赤い小さな実が房状になったサンゴジュ(珊瑚樹,スイカズラ科)の枝を見ました.今年は日当たりが悪いので,実は真っ赤にならず黒く腐った部分もありました.最後に,10cm長の実のついたキササゲ(楸または木?豆,ノウゼンカズラ科)を見ました.利尿剤に使われるキササゲの細長い実はジュウロクササゲ(十六大角豆,マメ科)の実に似ていますが,キササゲはマメ科ではありません.

ミノムシ(蓑虫) 参加者が持ってきた植物

 集合場所の銀杏が黄色くなり始めていました.関連してイチョウ(銀杏,イチョウ科)の葉エキスなどは認知症の予防に効くという話がでました.ただし,医療情報は時代とともに変わるので,本当によいかどうかは分からないという注釈つきでした.たとえば,ギランバレル症候群は昔は直るとされていましたが,大原麗子さんがそれで亡くなったように,必ずしも直るとは限らないというように医学書の記述は変化したそうです.
 トキ(朱鷺,トキ科)やオオゴマダラ(大胡麻斑,ゴマダラチョウ科)を孵化させて自然に放すという事に対して反対の意見が出ました.海亀の卵を掘り起こして,別の場所で孵化させて海に戻すことが,世界的に非難されているという最近の話題もでました.
 先月のオオミズアオ(大水青,ヤママユガ科)は,まだ成虫になっていないという報告がありました.また,先月の記録のシマスズメノヒエ(島雀の稗,イネ科)は外来種で,同じく外来種で多く見られるタチスズメノヒエ(立雀の稗,イネ科)は黄色い葯(やく)を持っており,普通のスズメノヒエ(雀の稗,イネ科)は非常に少なくなったという話題がでました.なお,先月の記録の中のコナラシギゾウムシ(木楢鴫象虫,ゾウムシ科)はハイイロチョッキリ(灰色丁切,オトシブミ科)の誤りという指摘がありました.このとき,雲行きがおかしく,大粒の雨が手についたと思いましたが,上を見てアブラゼミのおしっこであることが分かりました.
 ここまでで,10:05になり急いで出発しました.
 最初に,集合場所のソメイヨシノ(染井吉野,バラ科)のうろのようになったところで,宿り木のようになっている緑色の茎だけのマツバラン(松葉蘭,マツバラン科)を見つけて観察しました.絶滅危惧種になっているマツバランの胞子が飛んで来たと推測されましたが,人間が持ってきたのではと疑う参加者もいました.

マツバラン

 歩道上でクマゼミの雌を捕まえ,頭,胸,腹の部位がどこかということで,脚は胸からでており,頭はほんの少ししかないという説明がありました.最近の日経新聞の記事の中で,アブラゼミが減った理由の1つとして,クマゼミよりアブラゼミの方がヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)に食べられやすいと言う記述があったそうです.
石垣の下方で青い花を咲かせていたツユクサ(露草,ツユクサ科)を見て,見慣れない毛の付いたツユクサが他所であったということで,デジカメのディスプレイを見せていた参加者がいました.同じ場所で,石垣のノブドウ(野葡萄,ブドウ科)とエビズル(蝦蔓または海老蔓,ブドウ科)を比較しました.ノブドウは,ツルがすべての節からでていますが,エビズルは,「あるあるなし」というように2つおきにツルがついていないそうです.ただし,エビズルをよく観察してもツルがとれている場所もあり,よく分かりませんでした.葉をくらべると,エビズルの若い葉の裏は,毛があり白っぽく見えました.

【外部リンク】続・裸の樹木と仲良くなる(里山植物紳士録)

クマゼミ エビズル

 平和公園に入ってすぐに,ピンク色の花をつけたハナトラノオ(花虎尾,シゾ科)がありました.その反対側の場所は,鉛汚染土壌を除去する作業が進んでいました.このあたりは,5mの深さの池になる予定だそうです.除去土壌を三角錐状に積み上げてありました.袋に詰めて運搬できるようにしたものもありました.この場所のクロバナロウバイ(黒花蝋梅,ロウバイ科)は,保存する予定でしたが,植え替えた所をブルド−ザが通ってしまって,なくなってしまったそうです.

 ここで,10cm大の枯れ草色の大きなナナフシ(七節,ナナフシ科)を見つけました,先頭の片側の脚がなくなっていました.触角が短いので,先月見たトビナナフシ(飛七節,ナナフシ科)ではないことが分かりました.周辺のコナラ(木楢,ブナ科)には小さなドングリがついていました.
 炭焼き小屋を造る予定の場所へ行き,ここでも鉛汚染土壌の除去が行われているのを見ました.近くの木の葉の上でギンツバメ(銀燕,ツバメガ科)がじっとしていました.

ハナトラノオ コナラのドングリ ギンツバメ

 湿地の畦を通っているときに,ジョロウグモ(女郎蜘蛛,ジョロウグモ科)の網についたシロガネイソウロウグモ(白銀居候蜘蛛,ヒメグモ科)を2匹見つけて写真を撮りました.かなり大きくなっていました.それでも1mm大程度でしたが,クリアな写真が初めて撮れました.湿地には,サギソウ(鷺草,ラン科)やミソハギ(禊萩,ミソハギ科)の花が咲いていました.シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)は,まだ見つかりませんでした.
 登り斜面を藪こぎするときにベッコウハゴロモ(鼈甲羽衣,ハゴロモ科)を見つけました.斜面を登ったところで,シャシャンボ(小小坊,ツツジ科)を見つけて,まだ青い実を食べた参加者がいました.食べられないことはないという感想でした.5mm大のピンクの花をつけたトウカイコモウセンゴケ(東海小毛氈苔,モウセンゴケ科)を1株見つけて観察しました.白い花をつけたものも3〜4株見つけましたが,これらもトウカイコモウセンゴケかどうかの議論がありました.

シロガネイソウロウグモ サギソウ ミソハギ トウカイコモウセンゴケ

 新池に戻る途中で,トウネズミモチ(唐鼠黐,モクセイ科)とハリギリ(針桐,ウコギ科)を見つけました.ハリギリには,茎の節に鋭い棘がついていました.ウラジロノキ(裏白木,バラ科)とイソノキ(磯の木,クロウメモドキ科)の実も観察しました.まだ,十分には熟していませんでした.それでもイソノキの実を食べた人が多くいました.生臭いという感想がでました.ウスノキ(臼木,ツツジ科)も近くにありましたが,赤い実はついていませんでした.

トウネズミモチ ハリギリ ウラジロノキの実 イソノキの実


 ビーティングネットでハイイロチョッキリとシャクトリムシ(尺取虫,シャクガ科)の他に,枯葉に擬態した幼虫を捕まえました.最初は,動かないので本当に枯葉だと思った人が多かったですが,よく観察すると頭のようなものがありました.少し後で,複数の触角のようなものをたてて動き始めました.じっとしていたときの姿との違いに参加者は唖然としました.あとで,ウコンカギバ(鬱金鉤羽蛾,カギバガ科)の幼虫ということが判明しました.

 平和公園から新池にでる斜面の横で,黒いムカゴ(零余子)のついた3本のオニユリ(鬼百合,ユリ科)を見つけました.花も咲いていないのに,一部のムカゴは発根していました.

枯葉に擬態したウコンカギバの幼虫 動き始めたウコンカギバの幼虫 発根しているオニユリのムカゴ

 最終的に新池横の集合場所に戻って感想会をしました.これまでの観察会で初めての経験でした.観察した項目を確認しましたが,参加者が2つのテーブルに分かれて座ったので,順番に言う感想は省略されました.日差しがなかったので,8月の観察会としては楽だったという感想が個人的にありました.
 新池にカワセミ(翡翠,カワセミ科)が2羽来ているということで,解散して個別に見に行きました.種々の生き物を見ることができた真夏の楽しい観察になりました.

観察項目:ギョリュウ,ミノムシ,ホルトノキ,サンゴジュ,キササゲ,モミジバフウ(アメリカフウ),マツバラン,ソメイヨシノの幹から出た根,アリの行列,アリの巣になっているサルノコシカケのついた切り株,クマゼミ,アブラゼミ,ツクツクボウシの鳴き声,ニイニイゼミとアブラゼミの抜け殻,ツユクサ,ノブドウ,エビズル,クロバナロウバイのあった場所,イチョウ,シロガネイソウロウグモ,シロバナサクラタデ,サギソウ,ナナフシ,マンネンダケ,トウカイコモウセンゴケ,ハイイロチョッキリ,シャクトリムシ,ウコンカギバの幼虫,ウラジロ,イソノキ,ツルウメモドキ,オニユリのムカゴ,ソヨゴ,タカサゴユリ,ジンガサハムシ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2009年8月の観察記録です。
2009-11-3 439

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