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2009年 > 9月度の観察記録
9月度の観察記録
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 前日の雨が嘘のような晴天になりました.草木は水を得て,生き生きとしていました.日差しはきつかったですが,涼しい風が吹き,コオロギ(蟋蟀,コオロギ科)などの虫の声が盛んに聞こえ,既に秋の気配が感じられました.新池の周辺の土手では赤とんぼがたくさん飛んでいました.水鳥は先月と同じようにいませんでした.歩道横では,アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)の花とひっつき虫の実が混在していました.元清風荘のイロハモミジ(伊呂波槭樹,カエデ科)は上部が紅葉を始めていました.その周辺に,50羽を越えるスズメ(雀,スズメ科)がいました.集合場所の草を刈った場所を歩くと,多くのヒシバッタ(菱飛蝗,ヒシバッタ科)が飛び出しました.ツクツクボウシ(つくつく法師または?,セミ科)の鳴き声が平和公園の方から寂しげに聞こえました.涼しくなったこともあり,ここ3ヶ月休んでいた方も参加されました.参加者は子供3名と大人24名でした.

紅葉を始めたイロハモミジ

 まず,ある参加者が拾って持ってきた2種の野鳥の羽根の同定をしました.その参加者によると,片方の羽根は,大きさはフクロウ(梟,フクロウ科)で,模様はアオバズク(青葉木菟または青葉梟,フクロウ科)だと思っていたそうです.日本野鳥の会の会員で,平和公園と東山の探鳥会のメンバーで,日進の探鳥も長年やられている人で,野鳥の羽根の収集家の人に来ていただいていました.即座にフクロウツツドリ(筒鳥,カッコウ科)の羽根であることを判定されました.フクロウは昨年,東山で繁殖したので,その羽根が落ちているのはおかしくないそうです.フクロウの羽根は,表面に消音のための柔毛があり,すぐにわかるそうです.その方は130種以上の野鳥の羽根を所持し,そのカラーコピーの一部を見せていただきました.もう1つの羽根は,ツツドリのもので,カラーコピーのものと良く一致しました.繁殖後,両側の一対の羽根が落ちるそうです.筒をたたいた時の「ポッポッ」というような鳴き声から,その名前がついたそうです.50年間で得た知識を,即座に与えてもらって,どのように報いたらよいのかという発言が参加者からありました.探鳥会に参加するベテランの大半の人は,教えることが楽しみの1つであるようです.

フクロウとツツドリの羽根

 プラスチックの四角い金魚鉢の中のハマユウ(浜木綿,ヒガンバナ科)の葉についたたくさんの5cm長のハマオモトヨトウ(浜万年青夜盗,ヤガ科)の幼虫を観察しました.きれいな白黒の横縞模様をしていましたが,数が多いので気持ち悪るがる人もいました.フンは,体の大きさに似合わず,2mm長くらいの大きさでした.1930年台に入ってきた外来種で,北限を北上しており,最近は名古屋でも繁殖しているそうです.この幼虫をもらっていく参加者が,餌のハマユウを探しに行き,雨でおぼれて死んだハマオモトヨトウを見つけたそうです.幼虫はきれいな横縞模様をしているので,親はさぞかしという感想がでました.ハマオモトヨトウを持ってこられた参加者が,これに答えてヨウトウガの図鑑を見せて,成虫は一見すると茶色で地味ですが,光の当たり方で色が変わりきれいだという説明を一生懸命にされました.さらに,それではもっとも不細工なヨトウガはという質問に,全てきれいだという回答をされました.

【外部リンク】ハマオモトヨトウ(みんなで作る日本産蛾類図鑑)

 関連して,蛾と蝶の区別はないという説明が蝶に詳しい参加者からありました.
 次に,斑入りの大きなアカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の葉と普通の葉を比べて観察しました.

ハマオモトヨトウの幼虫

斑入りのアカメガシワの葉

 平和公園には,山側から入りました.道のすぐ横の幹が30cm径くらいの大きなコナラ(木楢,ブナ科)の根本に,木くずがこんもりとしているのを見つけました.カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,キクイムシ科)が入ったあとでした.幹には多くの小さな穴があいており,細長いものを刺してみて,意外と穴が深いことが分かりました.コナラがこれによって枯れても,世代交代になると考えればよいという発言もありました.
 近くのアベマキ(阿部槇,ブナ科)の幹に翅がボロのサトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰,タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科)がとまっていました.タテハチョウ科は,4本脚だそうです.前脚の2本は,退化して感覚器官になっているそうです.幹が30cm径程度のアベマキは炭焼きには大きすぎますが,縦割りにすれば炭焼きにも利用可能だということを,新潟で子供の頃,炭焼きをやったことがある参加者から説明がありました.近くの低いところにある小枝にアオマツムシ(青松虫,マツムシ科)がとまっており,皆で観察しました.1900年頃に中国から入った外来種とのことでした.頭上でツクツクボウシが大きな声で鳴いていました.

サトヒマダラヒカゲ

アオマツムシ

 水田近くの斜面のウスノキ(臼木,ツツジ科)の赤い実を集めるように要請がありました.炭焼き広場の周辺に植えるためだそうです.
 コナラシギゾウムシ(木楢鴫象虫,ゾウムシ科)とセンチコガネ(雪隠黄金,コガネムシ科)を見つけて,観察瓶に入れて観察しました.

ウスノキの実

コナラシギゾウムシ

センチコガネ

 しめった地面にウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)がとまっていました.雄雌を区別するために,飛ばしてみると表面が赤黒になっており,雄でした.近くに,チャバネセセリ(茶翅?,セセリチョウ科)もとまっていました.英語ではskipperというそうです.クズ(葛,マメ科)の花にベニシジミ(紅小灰蝶,シジミチョウ科)がとまって,蜜を吸っていました.さらに周辺では,ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋,タテハチョウ科)の雌とアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいました.オニヤンマ(鬼蜻蜒,オニヤンマ科)も頭上をスイスイと飛んでいました.ここで,カメムシ(亀虫,カメムシ科)の幼体も見つけて観察しました.

クズの花とベニシジミチョウ

カメムシの幼体

 セリ(芹,セリ科)についたキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)の卵を見つけた人がいました.1mm大の卵が2つ付いていました.ジョロウグモ(女郎蜘蛛,アシナガクモ科)を見つけけた男の子は,全く怖がらず手に這わせて写真を撮るのに協力してくれました.

 湿地の角のオフサモ(大房藻,アリノトウグサ科)を観察して,外来種で駆除対象の植物であるとの説明がありました.この植物の移動は,許可を得ないといけないそうです.湿地にはシラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科)が,たくさんありました.サワギキョウ(沢桔梗,キキョウ科),サワヒヨドリ(沢鵯,キク科)およびシロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)も一緒に花を咲かせていました.湿地横のイソノキ(磯の木,クロウメモドキ科)の実を多くの人が食べました.

 カナヘビ(蛇舅母,カナヘビ科)を捕まえ,拡大鏡のついた観察瓶に入れて観察しました.表面がワニ(鰐)の背中のようだという感想が男の子から出ました.

セリについたキアゲハの卵

オフサモ

カナヘビ

拡大鏡のついた観察瓶

 ツバキ(椿,ツバキ科)についた網の上のジョロウグモを観察しました.大きな雌と近くに一回り小さい雄がいました.雌の腹部の書肺(book-lung)が白から黒になる(成熟する)のをずっと待っていて,交接するそうです.別の網にガガンボ(大蚊,ガガンボ科)が,ジョロウグモに捕まったので観察しました.
 ツバキは,花芽と実が混在していました.近くのヤマノイモ(山の芋,ヤマノイモ科)は,独特の形の実を付けていました.

 1人の参加者がカワラタケ(瓦茸,サルノコシカケ科)をいっぱいつけた2m長の枯れ枝を引きずってきました.表面は模様の付いた黒で,裏面は真っ白なカワラタケでした.近くで,ウマオイ(馬追,キリギリス科)を大きくした(5cm長)ような,緑色の昆虫を捕らえました.「なごや平和公園の自然?」の9月にも記録したサトクダマキモドキ(里管巻擬き,キリギリス科)でした.

ジョロウグモの雄と雌

ヤマノイモの実

カワラタケ

 工事中の水路は遮水シートを敷き,その上に土を盛り,両側が崩れないように石積みがしてありました.水田を作るために水が必要であり,井戸を堀り水路を整備するということのようです.
 カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の縞の入った実が,カキ(柿,カキノキ科)の実に囲まれてありました. カレハガ(枯葉蛾,カレハガ科)のさなぎがアベマキの葉についていました.ノブドウ(野葡萄,ブドウ科)の瑠璃色の実もありました.アオツヅラフジ(青葛藤,ツヅラフジ科)の実から種をとって,種の形がアンモナイトに似ていることを確認しました.工事中の水路の土手にいたヤマカガシ(山棟蛇,ナミヘビ科)を一部の参加だけが見ることができました.シロシキブ(白式部,クマツヅラ科)の白い実は皆が観察しました.

カレハガのさなぎ

ノブドウの実

アオツヅラフジの種

シロシキブ

 感想会は,カキの木に囲まれた水路近くで行いました.涼しくて歩きやすかったという感想や,イソノキの実やヤマノイモのムカゴを食べておいしかったというものが出ました.男の子は,カナヘビの背中が拡大鏡で見るとワニのようだったことが印象に残ったようです.涼しい秋の気配を感じた楽しい感想会になりました.

観察項目:フクロウの羽根,ツツドリの羽根,アオギリの実,アカメガシワの葉,ハマオモトヨトウ,マツバラン,カシノナガキクイムシがコナラの幹につけた穴,ツルウメモドキ,サトキマダラヒカゲ,ウバタマムシ,コナラシギゾウムシ,センチコガネ,ルリタテハ,キアゲハの卵,オオフタモ,ワレモコウ,ウスノキの実,シラタマホシクサ,サワギキョウ,サワヒヨドリ,シロバナサクラタデ,ジュズダマ,カナヘビ,ヤマノイモの実,ヤマカガシ,ツバキの実,ジョロウグモ,ガガンボ,サトクダマキモドキ,カラスウリの実,カレハガのさなぎ,ノブドウの実,アオツヅラフジの実,シロシキブ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2009年9月の観察記録です。
2009-11-3 492

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