前日の雨が嘘のような晴天になりました.草木は水を得て,生き生きとしていました.日差しはきつかったですが,涼しい風が吹き,コオロギ(蟋蟀,コオロギ科)などの虫の声が盛んに聞こえ,既に秋の気配が感じられました.新池の周辺の土手では赤とんぼがたくさん飛んでいました.水鳥は先月と同じようにいませんでした.歩道横では,アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩,マメ科)の花とひっつき虫の実が混在していました.元清風荘のイロハモミジ(伊呂波槭樹,カエデ科)は上部が紅葉を始めていました.その周辺に,50羽を越えるスズメ(雀,スズメ科)がいました.集合場所の草を刈った場所を歩くと,多くのヒシバッタ(菱飛蝗,ヒシバッタ科)が飛び出しました.ツクツクボウシ(つくつく法師または?,セミ科)の鳴き声が平和公園の方から寂しげに聞こえました.涼しくなったこともあり,ここ3ヶ月休んでいた方も参加されました.参加者は子供3名と大人24名でした.
まず,ある参加者が拾って持ってきた2種の野鳥の羽根の同定をしました.その参加者によると,片方の羽根は,大きさはフクロウ(梟,フクロウ科)で,模様はアオバズク(青葉木菟または青葉梟,フクロウ科)だと思っていたそうです.日本野鳥の会の会員で,平和公園と東山の探鳥会のメンバーで,日進の探鳥も長年やられている人で,野鳥の羽根の収集家の人に来ていただいていました.即座にフクロウとツツドリ(筒鳥,カッコウ科)の羽根であることを判定されました.フクロウは昨年,東山で繁殖したので,その羽根が落ちているのはおかしくないそうです.フクロウの羽根は,表面に消音のための柔毛があり,すぐにわかるそうです.その方は130種以上の野鳥の羽根を所持し,そのカラーコピーの一部を見せていただきました.もう1つの羽根は,ツツドリのもので,カラーコピーのものと良く一致しました.繁殖後,両側の一対の羽根が落ちるそうです.筒をたたいた時の「ポッポッ」というような鳴き声から,その名前がついたそうです.50年間で得た知識を,即座に与えてもらって,どのように報いたらよいのかという発言が参加者からありました.探鳥会に参加するベテランの大半の人は,教えることが楽しみの1つであるようです.
プラスチックの四角い金魚鉢の中のハマユウ(浜木綿,ヒガンバナ科)の葉についたたくさんの5cm長のハマオモトヨトウ(浜万年青夜盗,ヤガ科)の幼虫を観察しました.きれいな白黒の横縞模様をしていましたが,数が多いので気持ち悪るがる人もいました.フンは,体の大きさに似合わず,2mm長くらいの大きさでした.1930年台に入ってきた外来種で,北限を北上しており,最近は名古屋でも繁殖しているそうです.この幼虫をもらっていく参加者が,餌のハマユウを探しに行き,雨でおぼれて死んだハマオモトヨトウを見つけたそうです.幼虫はきれいな横縞模様をしているので,親はさぞかしという感想がでました.ハマオモトヨトウを持ってこられた参加者が,これに答えてヨウトウガの図鑑を見せて,成虫は一見すると茶色で地味ですが,光の当たり方で色が変わりきれいだという説明を一生懸命にされました.さらに,それではもっとも不細工なヨトウガはという質問に,全てきれいだという回答をされました.
平和公園には,山側から入りました.道のすぐ横の幹が30cm径くらいの大きなコナラ(木楢,ブナ科)の根本に,木くずがこんもりとしているのを見つけました.カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,キクイムシ科)が入ったあとでした.幹には多くの小さな穴があいており,細長いものを刺してみて,意外と穴が深いことが分かりました.コナラがこれによって枯れても,世代交代になると考えればよいという発言もありました.
水田近くの斜面のウスノキ(臼木,ツツジ科)の赤い実を集めるように要請がありました.炭焼き広場の周辺に植えるためだそうです.
しめった地面にウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科)がとまっていました.雄雌を区別するために,飛ばしてみると表面が赤黒になっており,雄でした.近くに,チャバネセセリ(茶翅?,セセリチョウ科)もとまっていました.英語ではskipperというそうです.クズ(葛,マメ科)の花にベニシジミ(紅小灰蝶,シジミチョウ科)がとまって,蜜を吸っていました.さらに周辺では,ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋,タテハチョウ科)の雌とアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)が飛んでいました.オニヤンマ(鬼蜻蜒,オニヤンマ科)も頭上をスイスイと飛んでいました.ここで,カメムシ(亀虫,カメムシ科)の幼体も見つけて観察しました.
セリ(芹,セリ科)についたキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)の卵を見つけた人がいました.1mm大の卵が2つ付いていました.ジョロウグモ(女郎蜘蛛,アシナガクモ科)を見つけけた男の子は,全く怖がらず手に這わせて写真を撮るのに協力してくれました.
ツバキ(椿,ツバキ科)についた網の上のジョロウグモを観察しました.大きな雌と近くに一回り小さい雄がいました.雌の腹部の書肺(book-lung)が白から黒になる(成熟する)のをずっと待っていて,交接するそうです.別の網にガガンボ(大蚊,ガガンボ科)が,ジョロウグモに捕まったので観察しました.
工事中の水路は遮水シートを敷き,その上に土を盛り,両側が崩れないように石積みがしてありました.水田を作るために水が必要であり,井戸を堀り水路を整備するということのようです.
感想会は,カキの木に囲まれた水路近くで行いました.涼しくて歩きやすかったという感想や,イソノキの実やヤマノイモのムカゴを食べておいしかったというものが出ました.男の子は,カナヘビの背中が拡大鏡で見るとワニのようだったことが印象に残ったようです.涼しい秋の気配を感じた楽しい感想会になりました. 文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子 |
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観察記録0909
2009年9月の観察記録です。
| 2009-11-3 | 580 | |
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