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2009年 > 10月度の観察記録
10月度の観察記録
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 台風18号も去り,久しぶりの快晴でした.アベマキ(阿部槇,ブナ科)などの葉や小枝がたくさん落ちていました.新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)は,相変わらず大半の水面を占めていましたが,既に葉はぐったりとして勢いを失っていました.新池周辺のクロガネモチ(黒鉄黐,モチノキ科)の小さな実は,既にかなり赤くなっていました.センダン(栴檀,センダン科)は緑色の実とクリーム色の実が混じっていました.台風によって両方の色の実がたくさん根元に落ちていました.新池周辺では,往年の勢いのなくなったセイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)が黄色い花を咲かせ初めていました.姿を見た野鳥はアオサギ(蒼鷺,サギ科)が1羽だけで,新池の土手にきていました.複数のモズ(百舌鳥,モズ科)が頭上で鳴いていましたが,姿は見えませんでした.集合場所の公園は,工事中でした.東星中学校への道を付け替えて,公園の中を通している工事で,今後,集合場所として使いにくくなりそうです.参加者は,子供3名を含む23名でした.連休の中日で,かつ,運動会や旅行の季節のため,例年より少ない参加者数でした.

クロガネモチの実 アオサギ

 まず,参加者が植物園で同定してもらったとして,アメリカイヌホオズキ(亜米利加犬鬼灯,ナス科)と言って持ってきた野草を観察しました.昔は畦にたくさんあったそうです.実は2〜4cmの小さな緑色の袋をもっていましたが,赤くならないそうです.アメリカイヌホオズキの実には袋はつきませんので,多分,帰化植物のセンナリホオズキ(千成酸漿,ナス科)のようでした.

   【外部リンク】園芸豆知識・雑学編(米村浩次の花の世界)

センナリホウズキ

 次に,同じ参加者が持ってきたボダイジュ(菩提樹,シナノキ科)の葉と実を見ました,お釈迦様がこの木の下で悟りを開いたと言われるインドボダイジュ(印度菩提樹,クワ科)とは違うそうです.インドボダイジュを,私はタイで実物を見ていますが,日本にはないという説明でした.しかし,インタネットで調べると5,000円程度で日本でも売られているようです.
 次に,5cm大の2つのボケ(木瓜,バラ科)の実とムクロジ(無患子,ムクロジ科)の実を観察しました.ムクロジの実は,石鹸がわりに用いられていたものです.果皮にサポニンが含まれ,アジアの国では今でもこの成分を使って石鹸を作っているところがあるそうです.まだ,表面は緑色でしたが,最終的には飴色になるそうです.

   【外部リンク】ムクロジ(京教の自然:京都教育大学)

 先月の報告を皆で見ました.ハマオモトヨトウ(浜万年青夜盗,ヤガ科)の幼虫は,さなぎになり,それから成虫の蛾になってすぐに産卵を開始したという報告がありました.その卵からかえったばかりの数mm長の幼虫を皆で観察しました.もう,横縞模様が表面にありました.このとき,男の子の手に,小さなクサカゲロウ(草蜻蛉または臭蜉蝣,クサカゲロウ科)の幼虫が這っているのを見つけて,皆で観察しました.男の子は,いやがりもせず平気でした.

ボダイジュの葉と実 ムクロジの実と種 ハマオモトヨトウの幼虫

 集合場所を出発して,清風荘跡地の草はらに2羽の鳥が,黙って草にとまっているのを見つけました.1羽はカワラヒワ(河原鶸,アトリ科)のようでしたが,もう1羽はモズのように見えましたが,遠くて鳴かなかったので確認できませんでした.次に,道路脇のツツジ(躑躅,ツツジ科)の上のジョロウグモ(女郎蜘,アシナガグモ科)を観察しました.クモが常に下向きにとまっている理由がまた議論されました.種類によっては上向きにとまるクモもいるようですが,下向きにとまるクモの網は下半分の方が大きく,重力の力を借りて早く獲物に到達するため下向きでいると言われているようです.

   【外部リンク】逆さまに網にとまるクモの逆さまの網(日本動物行動学会 第21回大会)

 ジョロウグモは,目が悪く震動で獲物がかかったことを知るそうです.そこで,ラの音の音叉を持ってきた参加者がいて,クモの網に振動を伝えました.最初は失敗して,かえって逃げてしまいました.ジョロウグモの雌が寄ってこようとしても,音叉を持った手を引いてしまうこともありました.最後に,別の網で成功して,ジョロウグモは寄ってきて音叉に糸を巻こうとしました.この網には,小ぶりの2匹の雄と約1mm大のシロガネイソウロウグモ(白銀居候蜘蛛,ヒメグモ科)もいました.

 平和公園入り口のカナメモチ(要黐,バラ科)に小さなゴミグモ(塵蜘蛛,コガネグモ科)の網をみつけました.ゴミグモは,別の所で捕獲して,観察瓶にいれて皆で回覧しました.近くにはコクサグモ(小草蜘蛛,タナグモ科)の網もありました,

 平和公園に入って,しめった泥道の上に,翅がボロになったルリタテハ(瑠璃立羽蝶,タテハチョウ科)が,翅を広げたり綴じたりして,独特の青い模様を見せていました.皆で観察していると,閉じたままになってしまいました.ルリタテハは成虫で越冬するという説明がありました.
 近くのアベマキにスズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)がいたため,気をつけて通るように注意がありました.背をかがめて第2木道を通って,山側に行きました.畑の跡地は,ひどく荒れていました.アップルミント(Applemint,シソ科)や黄色い花と20cmを越える細長い実を同居させたハブチャ(波布茶,マメ科,別名:エビスグサ)などの畑のなごりのまわりをコセンダングサ(小栴檀草,キク科)などの野草が囲んでいました.コセンダングサの黄色い花には,日本ミツバチ(日本蜜蜂,ミツバチ科)が来ていました.

ルリタテハ

 竹林の横で,緑色の3cm長のオナガグモ(尾長蜘蛛,ヒメグモ科)を見つけました.長い尾を持っているので,一見するとバッタのようでした.イナゴ(蝗または稲子,イナゴ科)とクビキリギス(首螽斯,キリギリス科)も見つけた人がいて,皆で観察しました.竹林の周辺には,カラスウリ(烏瓜,ウリ科)の実がいくつかありました.まだ,緑色のものや黄色に混じって赤くなったものもありました.赤い実をつけたウメモドキ(梅擬,モチノキ科)や瑠璃色の実をつけたサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)も見ました.

オナガグモ カラスウリの実 ウメモドキ サワフタギ

 水田近くの湿地には,シロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科),ミゾソバ(溝蕎,タデ科),スイラン(水蘭,キク科),シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科),サワギギョウ(沢桔梗,キキョウ科)が花を咲かせていました.白い小さな地味な花をつけたヤノネグサ(矢の根草,タデ科)も畦にまだありました.
 斜面を登る途中で,木々の根元に細長いジグモ(地蜘蛛,ジグモ科)の巣を複数見つけました.各々の巣は,半分くらい土の中に埋まっていましたが,20cm長くらいの1つの巣を注意深く掘り出しました.しかし,クモは巣の中にいませんでした.他の参加者が,後で別の巣で見つけて観察瓶に入れて見せくれました.ジグモの巣は,エナガが鳥の巣の材料にするそうです.触ってみるとフワフワで,べたつきませんでした.掘り出した巣を見て,昔の母親のストッキングだと言う参加者がいました.昔は,ストッキングは貴重品で,洗って干して使いましたが,まさにその状態とよく似ていました.ジグモの巣のすぐ横に,カミキリムシ(髪切虫または天牛,カミキリムシ科)のフンが山のようにありました.

スイランとシラタマホシクサ ジグモの巣 ジグモ カミキリムシのフン

 道端のハギ(萩,マメ科)の花を観察して,ガクが5枚あることを確認しました.ミヤギノハギ(宮城野萩,マメ科)そのものではなさそうで,ヤマハギ(山萩,マメ科)との交雑種ではないかということになりました.ヒヨドリバナ(鵯花,キク科)の花が,周辺に咲いていました.この花が好きなアサギマダラ(浅黄斑,マダラチョウ科)は結局今回の観察会では見つかりませんでした.近くに緑色の実をつけたネジキ(捻木,ツツジ科)がありました.また,シャシャンボ(少々坊,ツツジ科)も少し紫になりかかった実をつけていました.

ハギ ネジキ シャシャンボ

アベマキの虫こぶをつぶして,中にいたタマバエ(玉蠅,タマバエ科)の幼虫を観察しました.

アベマキの虫こぶ アベマキの虫こぶから出てきたタマバエの幼虫

 星ヶ丘駅へ降りていく脇道の近くで,ソヨゴ(青冬,モチノキ科)の赤い実とマテバシイ(全手葉椎,ブナ科)のドングリを観察しました.女の子は,ドングリを投げて遊んでいました.星ヶ丘駅とは,逆の方向の斜面を降りて,そこで感想会を行いました.途中で,キタテハ(黄立羽,タテハチョウ科)を網で捕獲して観察しました.翅にCの文字が小さく浮き出ていました.シタテハ(C立羽,タテハチョウ科)ではないかという人もいましたが,図鑑と見比べて結局キタテハということになりました.

   【外部リンク】キタテハ(Nature Photo Bulletin Board)

キタテハ

 感想会をした場所の横の水路のしめった泥の上には,ウラギンシジミ(裏銀小灰蝶,シジミチョウ科ウラギンシジミ亜科)の雌が一頭いました.カキ(柿,カキ科)とカラタチ(枳,ミカン科)が,両方とも実をたくさん付けていました.

 感想会は,モズの高鳴きを聞きながら行いました.ここで,ジグモ,ゴミグモ,コグサグモおよびハシリグモをそれぞれ観察瓶に入れて回覧して観察しました.クモの話が出ているときに,青空の雲を指さして,あれはすじ雲という冗談を飛ばした人もいました.さわやかな実りの秋の観察会になりました.

観察項目:センナリホオズキ,ボダイジュの葉と実,ボケの実,ムクロジの実,ハマオモトヨトウの幼虫,クサカゲロウの幼虫,カワラヒワ,ジョロウグモの雌と雄,シロガネイソウロウグモ,カナメモチ,ゴミグモ,ルリタテハ,スズメバチ,シロバナサクラタデ,オナガグモ,イナゴ,クビキリギス,カラスウリ,スズコナリヒラ,ハブチャ,アップルミント,コセンダングサ,アベマキの虫こぶ,タマバエの幼虫,ツルマメ,ガマズミ,ウメモドキ,スイラン,シラタマホシクサ,サワギキョウ,ヤノネグサ,ジュズダマ,ヒヨドリバナ,ジグモ,ジグモの巣,サワフタギ,ハギ,ソヨゴ,マテバシイ,シャシャンボ,コグサグモ,キタテハ,ウラギンシジミ,カキ,カラタチ(概ね観察順)

文・写真:伊藤義人 
監修:田畑恭子

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2009年10月度の観察記録です。
2009-11-30 619

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