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2010年 > 2月度の観察記録
2月度の観察記録
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 雲1つない快晴で,風もなくこの時期にしては大変暖かい日でした.新池周辺のセンダン(栴檀,センダン科)は,すっかり冬枯れで実もついていないのに,ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)が数羽とまっていました.根元に表面がしわしわになった実がたくさん落ちていました.新池の広い水面には,カイツブリ(鳰,カイツブリ科)とバン(鷭,クイナ科)が2羽ずついただけでした.その代わりツグミ(鶫,ツグミ科),シロハラ(白腹,ツグミ科),ハクセキレイ(白鶺鴒,セキレイ科),セグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科),ジョウビタキ(尉鶲,ツグミ科),コサギ(小鷺,サギ科)が新池周辺にいました.元清風荘では原っぱの工事が進み,斜面の法面(のりめん)保護工事も始まっていました.参加者は,出発時に男の子3名を含めて32名でした,その後,途中で数名増えたようでした.

シロハラ ハクセキレイ

 まず,先月の報告を見てカイガラムシ(貝殻虫)とウメ(梅,バラ科)の話が出ました.ウメにウグイス(鶯,ウグイス科)といいますが,実際はメジロ(目白,メジロ科)で,梅についたタマカタカイガラムシ(玉堅貝殻虫,カタカイガラムシ科)をメジロは好きなようです.メジロは蜜も好きですが,ウグイスは虫食いですので,カイガラムシのついた梅に来そうですが,警戒心が強いので通常は見かけないようです.
 先月のマツムシ(松虫,マツムシ科)の天敵の名前が間違っていたようです.正確にはアオマツムシクロタマゴバチ(青松虫黒卵蜂,タマゴバチ科).前に話題になったクロマダラソテツシジミ(黒斑蘇鉄蜆,シジミチョウ科)は,今年は名古屋の冬が寒かったので越冬できなかっただろうという予想がだされました.
 次に,参加者が持ってきた5cm大のカラスウリ(烏瓜,ウリ科)の実を見ました.まさに柿色でしたが,英語ではどういうのだろうという質問が出ました.柿は英語でJapanese persimmonまたはkakiですが,柿色はyellowish redというようです.
 自然史博物館が名古屋にないということで,生物多様性センターの準備室を作るためのパブリックコメントを書いてほしいという要請がありました.

カラスウリの実

 中道から平和公園に入って,オタマジャクシ池のすぐ北の段々畑に入って,奥のタケ(竹,イネ科)を観察しました.西奥のスホウチク(蘇方竹または蘇枋竹,イネ科)は,いわゆるバンブーといわれるもので,株だちで,竹稈に縦の緑の筋が入っていました.すぐ横のシホウチク(四方竹,イネ科)は,竹稈が四角で節に棘がありました.地下茎で増えるので,畑まで進出していました.その東側のスズコナリヒラ(鈴小業平竹,イネ科,別名:シマダイミョウチク)は,葉には黄色味を帯びた白いスジ斑が入り,明るい感じがするので庭木として好まれるそうです.トウチク(唐竹,イネ科,別名:大名竹)も後ろの方にあり,節の間の竹稈が長いという話がありました.次に,畑の中の冬枯れしているトウカエデ(唐楓,カエデ科)を観察しました.枝が突起状になっており,最初,何の木か分かりませんでした.

スホウチク 畑まで進出したシホウチク スズコナリヒラ

 オタマジャクシ池の向かえの大坂池(オサカイケ)を見に行きました.地面にピンクのテープで2重にマーキングされていました.今後,2段ロープの手すりをつけるためのものだそうです.内側は,子供が池に落ちないためのもので,外側はエコゾーンとして人が入らないようにするためのものだそうです.すぐ横の以前からあった小さな池は,スモモ(李,バラ科)が植わっているので李池(スモモイケ)という名前になったそうです.李池に一羽のコサギが来ていました.なお,オタマジャクシ池の西側は,今は水はないですが蛙池(カエルイケ)という名前にしたそうです.

大坂池のフェンス予定テープ 李池のコサギ

 少し東へ進んだ所で,轢かれて死んだシマヘビ(縞蛇,ナミヘビ科)の死骸を観察しました.頭はありませんでした.どこからが尻尾かという問いに対して,お尻の穴(排泄と生殖を行うための「総排泄孔」)から後ろが尻尾だという説明が,実際に腹側を見せながらありました.尻尾には胴体のような肋骨はないということでした.この蛇は雄でしたが,一般に雄は生殖器をしまうので,雌より尻尾が長いそうです.このヘビの骨を標本にするために持って帰る参加者がいました.
 芝生広場の前の湿地に行き,アカガエル(赤蛙,アカガエル科)の卵塊を見つけました.2月7日には既にあったそうです.卵塊の上に白いガマの穂がついており,これを取り除いて写真を撮りました.湿地のアシ(葦,イネ科)はきれいに刈られていました.野鳥の会の人達も,来年にアシが成長するために刈ることには賛成しているという報告がありました.このとき,ジョウビタキが1羽杭にとまりました.

シマヘビの死骸 アカガエルの卵塊 刈り取られた葦原

 少し進んで,ハクモクレン(白木蓮,モクレン科)などの根元に葉だけのヒガンバナ(彼岸花,ヒガンバナ科)がありました.背の低いものもあり,こちらはスイセン(水仙,ヒガンバナ科)ではという人もいました.水路(「せせらぎ」と命名)の横にあったキリ(桐,ゴマノハグサ科)を観察しました.1cm大の丸い花芽がたくさんついていました.昨年の5cm大の実殻も枝についていました.周辺が湿っているので,ノキシノブ(軒忍,ウラボシ科)がたくさんついたコナラ(木楢,ブナ科)もありました.次に,近くのシンジュ(神樹,ニガキ科)の幼木の葉痕を観察しました.その葉痕の形が,「牛の足跡」,「カメムシ」,「ハート」そして「ピエロの口」に見えるという感想が出ました.1m丈くらいのコナラとアベマキ(阿部槇,ブナ科)の植樹を観察しました.枯葉のついたアベマキはすぐに分かりましたが,枯葉のついていないアベマキとコナラの見分けは簡単ではありませんでした.木の先端の葉芽(冬芽)の数が多いのがコナラだという説明がありました.

キリの花芽 コナラについたノキシノブ シンジュの葉痕 コナラの新芽

 ここから藪こぎをして,カンアオイ(寒葵,ウマノスズクサ科)の観察に行きました.途中で,ネジキ(捩木,ツツジ科)の赤い新枝のように見えたものは,イロハモミジ(伊呂波紅葉,カエデ科)の新枝でした.藪こぎの時に足下にホラシノブ(洞忍,イノモトソウ科)が紅葉して赤くなっているのを見つけました.春になればまた緑になるようです.藪こぎの途中で,地下水が湧き出る山崎川の源流を見ました.

ホラシノブ

 さらにいくと,少し広い場所に出て,1本の木の幹に枯れ枝が組まれ,子供達の隠れ家のようになっていました.火をつけられたら困るという感想がでました.さらに藪こぎをして,段差のある所で黄色の実をつけたセンリョウ(千両,センリョウ科)の幼木を見つけました.花芽をつけたシュンラン(春蘭,ラン科)もいくつか見つけました.イヌマキ(犬槙,マキ科)の幼木と双葉のコクラン(黒蘭,ラン科)もいくつか見つけました.

黄色の実を付けたセンリョウ シュンラン イヌマキの幼木 コクラン

 1つのコロニーしかないカンアオイを観察した後で,いつものカンアオイの群生地に行きました.カンアオイの葉と花の数を皆で数えました.ヒメカンアオイ(姫寒葵,ウマノスズクサ科)の花と葉の数は,それぞれ123個と470枚でした.昨年は3月に数えて,147個と769枚でしたが,ここ数年は増加傾向であることは確かだそうです.葉の細長いスズカカンアオイ(鈴鹿寒葵,ウマノスズクサ科)の花と葉は,4個と10枚でしたので,昨年の2個と7枚に比べると増えていました.カンアオイを食草にしているギフチョウ(岐阜蝶,アゲハチョウ科)が戻ってくるためには,1頭につき300枚〜400枚の葉が必要だそうです.

ヒメカンアオイ スズカカンアオイ

 藪こぎをして,北の公園近くまで行きました.フェンスを越えるのが大変な参加者もいました.地下水を汲み上げて溜めている奥池に行き,さらに水路(せせらぎ)を見ました.せせらぎの流れの底は,水酸化鉄(さび)で赤くなっていました.この地域の地下水の特徴です.
 中道を西に進み,ハクバイ(白梅,バラ科)がたくさんの蕾をつけている近くで感想会をしました.名城公園などの梅は既に花が咲いていますが,この梅は日当たりがよいのにもかかわらず,まだ咲いていませんでした.キマワリ(木回り,ゴミムシダマシ科)の幼虫が観察瓶に入れて回覧されました.感想としては,暖かく春を感じたというものが多くでました.子供がもっといれば楽しいのにという感想もでました.先月の藪こぎより疲れたという感想もでましたが,他の参加者は先月の方が大変だったということでした.春間近の楽しい感想会になりました.

ハクバイの花芽 キマワリの幼虫

観察項目:カラスウリの実,スホウチク,シホウチク,スズコナリヒラ,トウカエデ,大坂池(オサカイケ),シマヘビの死骸,アカガエルの卵塊,ネコヤナギ,キリの蕾,ハクモクレン,シュンラン,コクラン,ホラシノブ,センリョウ,ヒメカンアオイ,スズカカンアオイ,コナラの冬芽,アベマキの冬芽,ノキシノブ,シンジュの葉痕,パンパスグラス,ツグミ,シロハラ,ジョウビタキ,シジュウカラ,カイツブリ,コサギ,ウメの蕾,キマワリの幼虫

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2010-4-11 455

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