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2011年 > 4月度の観察記録
4月度の観察記録
2011年4月度の観察記録です。

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 雲1つない快晴で,風もほとんどなく,歩いているときに上着を脱ぐほど暖かい日でした.桜が満開となり,同時に一部の花は散り始めていました.平和公園入口の標石近くの桜の木の先端にカワラヒワ(河原鶸,アトリ科)がじっととまって独特のコロコロジュイーンという鳴き声を出していました.水面にぽつぽつと睡蓮の新芽が出始めた新池では,つがいになったヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)9つがいとバン(鷭,クイナ科)1羽とカワウ(川鵜,ウ科)4羽がしきりに餌をとっていました.それ以外にもいつものように北の岸辺の樹木の下の水際に,浮寝状態の水鳥が数羽いました.周辺のトウカエデ(唐楓,カエデ科)は,繁り方に個体差はありましたが黄緑色のきれいな新緑の葉を付け始めていました.里山の家の前のケヤキ(欅,ニレ科)もやっと緑色の新葉が出始めていました.一方,クスノキ(楠または樟,クスノキ科)は茶色の葉が目立ち,葉の更新が始まっていました.しかし,センダン(栴檀,センダン科),サルスベリ(猿滑,ミソハギ科)およびムクゲ(木槿,アオイ科)は,まだ新葉を出しておらず冬景色でした.参加者は,子供4名を含む26名でした.

新池

 里山の家の前でザリガニ(喇蛄,ザリガニ科)の死骸を子供が見つけました.カラス(烏,カラス科)が持ってきたのではないかと言う参加者がいました.大坂池やスモモ池にもザリガニは既におり,その可能性は高いようです.最近,蛙が少なくなったということも一緒に話題になりました.
先月の報告を見て,電線にとまった写真のツグミ(鶫,ツグミ科)が多くの参加者にとって不思議に見えたようです.クロバイ(黒灰,ハイノキ科)の苗木は人気があって1本2万円程度で売っているという報告がありました.植樹したネコヤナギ(猫柳,ヤナギ科)の雄花の写真が載っていましたが,葉が出てこないと本当の樹種は分からないということでした.同じく写真が載っていたヒサカキ(姫榊または非榊,ツバキ科)は雄花,雌花および両生花があり,今回の観察会でも雌花を探すことになりました.守山の八竜緑地から持ってきた平和公園のヤチヤナギ(谷地柳,ヤマモモ科)が性転換して,雄株から雌株になったという報告もありました.
 小学1年生から参加していて,高校受験のため1年間観察会を休んでいた女の子が,久しぶりに参加して挨拶をしました.背丈もぐんと伸びていて,もう子供としてではなく,大人の参加者数に入れました.
 参加者が小さなガラスの容器に入れて持ってきた平和公園の大崖の八事層からとった土の標本を観察しました.乾燥させてふるいにかけたもので,日本画の岩絵の具のような中間色の茶色,白色および赤っぽい色の細粒土でした.新燃岳と桜島の噴出物をシャーレに入れて持ってきた参加者もいました.こちらは顕微鏡で見ると結晶化したものもあり,塵肺になる可能性があるという報告がありました.

平和公園の土 新燃岳と桜島の噴出物

 出発してすぐに,大坂池の2羽のカルガモ(軽鴨,カモ科)に気づきました.水面には緑色のアオミドロ(青味泥,ホシミドロ科)も浮いていました.まず,土手のナズナ(薺,アブラナ科,別名:ペンペングサ)を観察しました.ネイチャーゲームでハート形のものを探させたら,子供たちはこのナズナの実を見つけてきたそうです.ナズナは,アブラナ科なので白い花の近くは胡麻和えにするとおいしいそうです.実の中の種の数を皆で数えました.ばらつきが大きく,1つの実に6〜26個でした.一株に花が150あるとして,3000個近い種をつけることになります.どうやって種は広がるか,あるいはこの実を鳥たちは食べるかという質問がでました.実ははじけるだけですが,カワラヒワやシメ(?,アトリ科)が,ナズナの実を食べているのを見かけたことがあります.

大坂池のアオミドロ ナズナ

 オタマジャクシ池の横で鉛汚染の確認のため,2本の塩化ビニルパイプを地中にさした調査井がありました.50mメッシュで調査しており,ここの地下水は基準の1.01 倍が出たということで,今後調査を継続して,最悪はこの地点が立入禁止になる可能性もあるそうです.これはS47までのクレー射撃場の鉛弾の影響で,陸軍はここでは射撃演習はしていなかったそうです.調査井の周辺には,ノビル(野蒜,ユリ科),ナノハナ(菜の花,アブラナ科)およびミント(女無天(Mint),シソ科)がありました.近くのオオシマザクラ(大島桜,バラ科)を見て,今年はこの葉を発酵させてさくら餅の塩蔵葉を作ろうという提案が出ました.湿地では,セリ(芹,セリ科)が群生していました.

調査井

 石段を登って,先日放火された山火事の跡を見に行きました.約300m2の下草が焼けていました.今後のこともあるので,50cm+1.4m+50cm 幅の管理道路を造って,2.5t軽トラックを通せるようにしようとする動きもあるそうです.鉛汚染のために覆土された道の幅をメジャーで測ってみると2.1m あり,これ以上の広い道を平和公園中に造ることに,参加者は賛成ではないようでした.
 芝生広場は,芝生の養生のため立入禁止になっていました.真ん中のところで植えた芝生がひっくりかえっており,多分,カラスが掘り起こしたのだろうということになりました.その後ろの大崖の周辺は立派な鉄製フェンスができていて,立入禁止になっていました.そのため,このフェンス沿いを藪こぎして進みました.
 ミツバアケビ(三葉通草,アケビ科)の花と左巻きのフジ(藤,マメ科)を観察しました.ここで,ビーティングネットで子供がオナガグモ(尾長蜘蛛,ヒメグモ科)を捕まえました.その名前の通り,尾が長くバッタのような形でした.ヤママユ(山繭,ヤママユガ科)の繭も見つけました.

ミツバアケビの花 左巻きのフジ オナガグモ ヤママユの繭

 コバノミツバツツジ(小葉三葉躑躅,ツツジ科)の蜜を吸いに来ていたビロードツリアブ(天鶩絨吊虻,ツリアブ科)を網でとろうと高校1年の女の子が奮闘しましたが,狭い所を敏捷に飛ぶのでこの場所では捕獲できませんでした.この周辺には,キチョウ(黄蝶,シロチョウ科)やミツバチ(蜜蜂,ミツバチ科)もきていました.コバノミツバツツジのすぐ横のネズミサシ(杜松,ヒノキ科)に,1cm 径くらいの実がついているのを見つけました.ここで,網でコツバメ(小燕蝶,シジミチョウ科)を捕獲した参加者がいたので,図鑑と見比べました.表の羽根がきれいだということで,名刺を使って無理矢理羽根を広げました.ガマズミ(莢迷,スイカズラ科)などを食草としているという記述が図鑑にありました.放してやると私の腹にとまってじっとしていました.

コバノミツバツツジ ネズミサシ コツバメ

 オオシマザクラの花の中で,おしべのやくが花びら状になっているのを見つけました.ここで,ピーティングネットで死んでいるマツトビゾウムシ(松とび象虫,ゾウムシ科)を見つけた人がいました.松の新芽を食べるため,4月〜5月の松に付いているそうです.6月には,もう松にはいないということで,どこへ行くのだろうという疑問がでました.

ヤクが花弁になったオオシマザクラ

 ヌルデ(白膠木,ウルシ科)とヤマハゼ(山黄櫨,ウルシ科)が入り組んだ木を見つけました.どちらも新芽を少しだけ出していました.コバノガマズミ(小葉莢迷,スイカズラ科)は開花していない密集した花芽をつけていました.数本のヤマザクラ(山桜,バラ科)が,葉と花を同時に付けていました.花だけのソメイヨシノ(染井吉野,バラ科)とは違った清楚な美しさがありました.マルバアオダモ(丸葉青椨,モクセイ科)は,まだ白くなっていない短冊状の花を付け始めていました.雌株と雄株のヒサカキの花を見つけて観察しました.既に花は盛りを過ぎて,茶色に変色し始めていました.

コバノガマズミ ヤマザクラの花 マルバアオダモ ヒサカキ

 ボクトウガ(木蠧蛾,ボクトウガ科)の赤い木くず糞をネジキ(捩木,ツツジ科)の根元で見つけました.さらに藪こぎでは,ゼンマイ(薇,ゼンマイ科)のようなウラジロ(裏白,ウラジロ科)の新芽とコシダ(小羊歯,ウラジロ科)を見ながら進みました.

ボクトウガの木くず糞 ウラジロの新芽

 ボケ(木瓜,バラ科)の花がある広い原っぱに出て,タンポポ(蒲公英,キク科)の黄,サクラ(桜,バラ科)のピンク,ユキヤナギ(雪柳,バラ科)の白および野草の緑の4色が配色された景色を皆で見とれました.地面には小さな紫色の花をつけたヒメスミレ(姫菫,スミレ科)も見つけました.コスミレ(小菫,スミレ科)かもという声もありました.

【外部リンク】日本のスミレ検索システム(植物図鑑・撮れたてドットコム)

 カキノキ(柿木,カキノキ科)についたミツバアケビの雄花と雌花を観察しました.グミ(茱萸または胡頽子,グミ科)の3cm 程の長い白い花も観察しました.ここで,男の子の父親がトカゲ(蜥蜴,トカゲ科)を捕まえて瓶に入れて,うれしそうな顔の子供に渡しました.別の男の子はヤブツバキ(藪椿,ツバキ科)の大きな花を集めて花串を作りました.3人の子供たちの記念撮影をしました.周辺でノビル(野蒜,ユリ科)を採取した参加者もいました.大きなコブシ(辛夷,モクレン科)の木は,すでに花を落とし始めていました.ここでやっと,ビロードツリアブを高校1年の女の子が網で捕まえたので,観察瓶に入れて皆で観察しました.脚は華奢でしたが,蜜を吸うとがった口吻は立派でした.体の大きさ割には翅が大きく,ホバリングして上手に蜜を吸うことができる体形でした.

グミの花

 時間がきたので,この原っぱで感想会をしました.陽差しが直接あたるので,じっとしていると,頭髪とカメラの黒いボディーが熱くなる程でした.きれいな新芽を見ることができて,4 月の観察会は一番好きだという参加者が複数いました.ただし,私のような数名いた花粉症の参加者にとっては,困った季節でもあります.感想会の間中,男の子たちは,周辺を飛び回って遊んでいました.とくに,背丈以上の笹の中へ突進しておっかけっこをするのをおもしろがっていました.この場所で,20年以上前に耕作地を撤去して整地をするときに,今ある木々をマークして残すために活躍した女性の参加者のことが話題になりました.大変おいしいアーモンドの入ったクッキーも振る舞われました.クビキリ(首螽斯,キリギリス科)が近くを飛び,急いで男の子の父親が網でつかまえました.コゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)がすぐ近くの木の幹をくるくる回って餌をとっていました.新緑の美しい快適な春の観察会になりました.

観察項目: 新燃岳と桜島の噴出物,平和公園の種々の色の細粒土,ザリガニ,ナズナ,セリ,地下水の調査井,オオシマザクラ,火事の跡,ミツバアケビ,コバノミツバツツジ,フジ,コツバメ,カニグモ,ヤママユの繭,ビロードツリアブ,コバノガマズミ,ガマズミ,マツトビゾウムシ,ヌルデ,ヤマハゼ,ヤマザクラ,マルバアオダモ,ウラジロの新芽,コシダ,オナガグモ,グミ,ノビル,ヤブツバキ,トウカイタンポポ,セイヨウタンポポ,ユキヤナギ,コブシ,スズメノヤリ,ヒメスミレ,コゲラ,クビキリ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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