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2011年 > 5月度の観察記録
5月度の観察記録
2011年5月度の観察記録です。

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 日差しが強い晴れになり,初夏の様相でした.新池の水面は,スイレン(睡蓮,スイレン科)に覆われ始めていて,昨年秋から先月までいたヒドリガモ(緋鳥鴨,カモ科)などのカモ類はもういませんでした.カワウ(川鵜,ウ科)とアオサギ(青鷺,サギ科)が1羽ずつどちらも陸に上がっていました.カワウは,羽根を広げて日干しをしていました.ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)とヒヨドリ(鵯,ヒヨドリ科)が周辺の樹木などでいつものように騒いでいました.また,カワラヒワ(河原鶸,アトリ科)が電線にとまってしきりにさえずっていました.新池周辺のサルスベリ(猿滑,ミソハギ科),ムクゲ(木槿,アオイ科)およびセンダン(栴檀,センダン科)も緑葉を出し始めていました.参加者は,子供5名を含む35名と大勢でした.

カワウ アオサギ
カワウ アオサギ

 まず,参加者の持ってこられたノイバラ(野茨,バラ科)についたキエダシャク(黄枝尺,シャクガ科)の幼虫を観察しました.最初に見たときには,ピンク色の棘も含めて擬態をしていたので,ノイバラだけで何もいないのではという声もでました.先のとがった触角を持っていて,葉をどけて触ると尺とりをして動き始めました.次に,マエアカスカシノメイガ(前赤透野螟蛾,ツトガ科)の3匹のさなぎを見ました.また,八重のツツジの花が珍しいとして持ってこられたヒラドツツジ(平戸躑躅,ツツジ科)の花を見ました.
 タラヨウ(多羅葉,モチノキ科,別名:葉書の木)の雄木と雌木の枝を持ってこられていました.水に落ちて雄木の花粉がとれたので,雄花が似た形のシナヒイラギ(支那柊,モチノキ科)の枝も持ってこられていました.早速,タラヨウの葉の裏に,シャープペンシルの金属の先で「LOVE」の文字を書いた参加者がいました.時間がたつと文字はますます鮮明に見えました.次に,大坂池を造る前に周辺にあったクロバナロウバイ(黒花蝋梅,ロウバイ科)を自宅に植えたものを里帰りとして持ってこられたのを見ました.黒い花がついていました.

キエダシャク マエアカスカシノメイガのさなぎ
キエダシャク マエアカスカシノメイガのさなぎ

 別の人が,ノムラモミジ(野村紅葉,カエデ科)を持ってこられていました.大きな葉は1年の内に緑色と紫色に交互になりますが,アントシアンと葉緑素のバランスで色が変わるという説明がありました.先月あった誘いに応じて,オオシマザクラ(大島桜,バラ科)の葉を使って桜餅を作って食べたという報告がありました.残念ながら,餅の方がうまくなかったので再度挑戦して,うまくいったら持ってこられるということでした.シオデ(牛尾菜,ユリ科)を持ってこられた参加者もいました.食べるとおいしくて,アスパラガス(阿蘭陀雉隠,英名Asparagu,ユリ科)のような味だそうです.

シオデ
シオデ

 里山の家を出発して,烏が行水をしていた大坂池の土手に入りました.植樹した1m背丈のヤマツツジ(山躑躅,ツツジ科)が花を咲かせていました.他の植樹した木々も緑葉を出し始めていました.3cmくらいの真っ黒なモモブトカミキリモドキ(腿太髪切擬,カミキリモドキ科)を網でつかまえ,手にとって観察しました.土手には,植樹した木々だけでなく種々の野草も生え始めていました.コメツブツメグサ(米粒詰草,マメ科)の黄色い花も咲いていました.4弁の小さな花を咲かせたイヌガラシ(犬辛子,アブラナ科)を食べてみて辛いので犬(イヌ,役にたたないという意味)という名称は不当だという意見がでました.直ぐ横に,黄色い花を長く伸びた茎の先端に付けたオッタチカタバミ(おっ立酢漿草,カタバミ科)がありました.また,ヤブジラミ(薮虱,セリ科),ハルジオン(春紫苑,キク科),ヒメジョオン(姫女 ?,キク科)などもありました.トウバナ(塔花,シゾ科)も淡紅色の小さな花を咲かせていました.アベマキ(阿部槇または?,ブナ科)の葉についた黄緑色で真中に白い縦筋の入った3cm長くらいのウラナミアカシジミ(裏波赤小灰蝶,シジミチョウ科)の幼虫も観察しました.スゲ(菅,カヤツリグサ科)や花の咲いたニワゼキショウ(庭石菖,アヤメ科)もわずかでしたがありました.土手から道に戻ると,スモモ池方向からコゲラ(小啄木鳥,キツツキ科)とシジュウカラ(四十雀,シジュウカラ科)のさえずりが聞こえました.葉に10数匹付いたオオトビモンシャチホコ(大鳶紋鯱,シャチホコガ科)の幼虫をもってきた参加者がいました.気持ち悪るがる人達もいました.

モモブトカミキリモドキ イヌガラシ ウラナミアカシジミの幼虫 オオトビモンシャチホコの幼虫
モモブトカミキリモドキ イヌガラシ ウラナミアカシジミの幼虫 オオトビモンシャチホコの幼虫

 道ばたのニシキギ(錦木,ニシキギ科)が小さな十字形の花を咲かせていました.ここで,カラスノエンドウ(烏豌豆,マメ科)についたアルファルファタコゾウムシ(alfalfa蛸象虫,ゾウムシ科)を観察しました.愛知県では1999年に発見された外来種で,最近は多く見かけるものです.男の子が,クビキリギス(首螽斯,キリギリス科)を捕まえて,他の子供にほしいかを聞いていました.ここで,テントウムシ(天道虫,テントウムシ科)とナナホシテントウ(七星天道虫,テントウムシ科)を見つけて観察しました.星のないテントウを男の子はナミテントウ(凡天道虫,テントウムシ科)だと言いました.たくさんあるカラスノエンドウの実の鞘で,草笛を複数の親子連れが作り始めました.上手にできた人達と,昔はよく鳴ったのにと悔しがるお父さんもいました.

ニシキギ テントウムシ
ニシキギ テントウムシ

 フジ(藤,マメ科)が,薄紫色の花をつけていました.花の蜜を吸いに来ていたクマバチ(熊蜂,クマバチ科)と最近増えたタイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,クマバチ科)を捕まえて観察しようとしました.網で捕獲した黒いタイワンタケクマバチを酢酸エチルの入った容器に入れようとしましたが,逃げられてしまいました.

フジ タイワンタケクマバチ
フジ タイワンタケクマバチ

 水田に向かっているときに,コナラ(木楢,ブナ科)の花やコバノガマズミ(小葉莢迷,スイカズラ科)の花芽を観察しました.ここで1cm大弱のゴミグモ(塵蜘蛛,コガネグモ科)を捕獲した人がいて,皆で観察しました.いつもは,蜘蛛の網のゴミの中に隠れていますが,今回は捕獲してごつごつした体を観察しました.また,木の葉の裏についた数匹のヤママユガ(山繭,ヤママユガ科)の2cm大の幼虫を観察しました.エメラルドグリーンのきれいな幼虫で,男の子達も見つけて喜んでいました.卵らしいものもありました.緑色の2cm大のカニグモも近くで観察しました.

ゴミグモ ヤママユガ カニグモ
ゴミグモ ヤママユガ カニグモ

 太いアベマキの下方の幹から細い枝が10数本出ていました.普通は枝がでない部位でしたが,カシノナガキクイムシ(樫長木喰虫,ナガキクイムシ科)の穿孔穴がたくさんあり,その刺激で枝が出たのかもしれません.
 マルバアオダモ(丸葉青椨,モクセイ科)が白い短冊状の花を咲かせていました.コバノガマズミとサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)も白い花と花芽が混じっていました.黒地に黄白色と橙色の点々で見事な造形の3cm長くらいのシロシタホタルガ(白下蛍蛾,マダラガ科)の幼虫を見つけて観察しました.ここで,背中に十字のマークのある米粒より小さいジュウジチビシギゾウムシ(十字禿び鴫象虫,ゾウムシ科)を捕獲した参加者がいて,拡大レンズのついた容器に入れて観察しました.濃い瑠璃色というより黒っぽいルリチュレンジバチ(瑠璃鐫花娘子蜂,ミフシハバチ科)が草の上でじっととまっていました.
 水田の横で背の低いセイタカアワダチソウ(背高泡立草,キク科)や淡い紫色の花をつけた群生したミヤコワスレ(都忘れ,キク科)がありました.ミヤコワスレは.園芸種で昔の畑の名残でした.参加者が多いので,列が分裂してなかなか次の観察地に進めず,先に行くのをあきらめて何回も止まりました.

シロシタホタルガ ルリチュレンジバチ
シロシタホタルガ ルリチュレンジバチ

 水田に行き,種をまいたレンゲ(蓮華,マメ科)の様子を見ましたが,芽だけは出ていましたが,花は全く咲いていませんでした.種を蒔く時期を間違えたようでした.水田の畦には,キュウリグサ(胡瓜草,ムラサキ科),ヨモギ(蓬,キク科),ハハコグサ(母子草,キク科),キツネノボタン(狐の牡丹,キンポウゲ科),ノミノフスマ(蚤の衾,ナデシコ科),ウシハコベ(牛繁縷,ナデシコ科)などがありました.よく似たノミノフスマとウシハコベは,白い花が10弁に見えますが,実は根元でつながっていて5弁でした.また,数頭のアオスジアゲハ(青条揚羽,アゲハチョウ科)がミネラルをとりに水田に来ていました.

ノミノフスマとウシハコベ
ノミノフスマとウシハコベ

 池のようになった湿地で,シマヘビ(縞蛇,ネミヘビ科)を見つけました.皆で池を取り囲むと,1m長程度のシマヘビは 頭を水の上に出して上手に泳ぎ別の岸に向かいました.捕虫網で捕まえようとした人もいましたが,失敗しました.
 芝生広場に行き,フジの花が咲いているところで,ホバリングしている雄のタイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,クマバチ科)を捕獲して,クマバチと並べて観察しました.タイワンタケクマバチは,体全体が黒っぽいですが,翅は真っ黒ではありませんでした.
 反対側のフェンスで囲われた中で白い花を咲かせたクロバイ(黒灰,ハイノキ科)を見に行きました.子供達がいたのでフェンスは登らず,遠くから眺めました.白い花の上には小さな虫がたくさん飛んでいました.近づくとよい香りがするそうです.クロバイの焼いた灰は淡黄色の媒染剤や釉薬に使ったそうです.日本の文化を支えた木という説明でした.ここで,捕虫網を受け皿にしてキシタバ(黄下翅,ヤガ科)の幼虫を2頭捕まえました.淡緑色の地に黒い縦縞がありました.1頭は3齢で3cm長くらいで細く,もう1頭は8cm長くらいの終齢の幼虫で,男の子の手に這わせたのを触ると幼虫とは思えない程激しく暴れました.

シマヘビ クロバイ キシタバ
シマヘビ クロバイ キシタバ

 集いの丘で感想会をしようとしましたが,陽差しが強く,花の咲いた大きなムクノキ(椋ノ木,ニレ科)の横の日陰に移動して,感想会をしました.風が吹くと弁当の中にムクノキの花が落ちてきました.初めてヘビを見たことや,緑多い中で多くの虫を観察できてよかったという感想がでました.列がなかなか進まなくても楽しい観察だったようです.感想会の間も一部の子供達は虫捕りに夢中でした.里山の家に平和公園の地図を貼り,登録した特派員が,その時々の平和公園の貴重種を除いた見頃なものを表示する試みをするという報告がありました.初夏の生き物あふれる楽しい観察会になりました.

観察項目:キエダシャク,ノイバラ,マエアカスカシノメイガ,ヒラドツツジ,クロバナロウバイ,タラヨウ,シナヒイラギ,ノムラモミジ,シオデ,ヤマツツジ,モモブトカミキリモドキ,コメツブツメグサ,イヌガラシ,トウバナ,オッタチカタバミ,ハハコグサ,キュウリグサ,ヨモギ,ノミノフスマ,ウシハコベ,ハルジオン,ヒメジョオン,アカメガシワの新芽,ウラナミアカシジミ,オオトビキモンシャチホコ,アルファルファタコゾウムシ,テントウムシ,ヒメウラナミシャチホコ,カニグモ,ジュウジチビシギゾウムシ,クチブトゾウムシ,サワフタギ,コバノガマズミ,オトシブミ,スモモキリガ,ハコベタマゾウムシ,タイワンタケクマバチ,クマバチ,ゴミグモ,ヤママユの幼虫,アオスジアゲハ,シマヘビ,セイヨウバクチノキ,イモカタバミ,マルバアオダモ,シロシタホタルガの幼虫,ヒメウラナミジャノメ,キツネノボタン,スカシタゴボウ,トキワハゼ,ハナイバナ,セイタカアワダチソウ,ミヤコワスレ,レンゲ,シマヘビ,クロバイ,フジ,キシタバ,ムクノキ  

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2011-8-21 282

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