今にも雨が降り出しそうな曇り空でした.それほど暑くはなかったですが,雑木林の中に入ると湿度100%で汗がふき出る状況でした.歩道の車道よりにはビヨウヤナギ(美容柳,オトギリソウ科)とキンシバイ(金糸梅,オトギリソウ科)の黄色い花がたくさん咲いていました.アカバナユウゲショウ(赤花夕化粧,アカバナ科)やカタバミ(酢漿草または方喰,カタバミ科)の花も,マメツゲ(豆黄楊,モチノキ科)の下で咲いていました.新池には,水鳥はアオサギ(青鷺,サギ科)が一羽来ていただけでした.代わりに,周辺でシジュウカラ(四十雀,シジュカラ科),カワラヒワ(河原鶸,アトリ科),ムクドリ(椋鳥,ムクドリ科)などがいました.昨年,遮光シートを敷いた新池の実験場には赤白のポールが数十本たててあり,調査中でした.参加者は,子供8名と大人30名でした.
集合場所の里山の家の前で,まず,「なごや平和公園の自然2010」の本が7冊目として紹介されました.今回から表紙写真の説明も索引欄に付けました.
参加者が持ってきたムネアカセンチコガネ(胸赤雪隠金亀子,コガネムシ科)を特別な観察容器に入れて観察しました.上部にレンズがついているので,上から拡大して見え,横方向からも見え,かつ下に反射鏡がついているので虫の裏側も観察できました.普通,牛糞につく虫ですが,野菜くずなどにもつくようです.犬の糞にはつかないという人もいました.次に,先週幼虫を見たキエダシャク(黄枝尺蛾,シャクガ科)の成虫を観察しました.先月の幼虫は,直ぐに死んで,今回あらたに成虫を採取してきたそうです.
黒いタイワンタケクマバチ(台湾竹熊蜂,ミツバチ科)と在来種のクマバチ(熊蜂,ミツバチ科)の標本を持ってきた人がいました.クマバチの背中の黄色がはげていたので,図鑑を見て普通はどうなっているかを確認しました.今回の標本ほどではありませんが,真ん中は少しはげているようです.
もやし状の白色と緑色の茎が出ている新池のスイレン(睡蓮,スイレン科)の根を見せながら,スイレンの生命力の強さの説明がありました.遮光シートの外へ茎を伸ばして,2割くらいが生き残れば十分生育するそうです.この説明があったときに,上空をカワラヒワが鳴きながら飛んでいきました.
8cm長くらいのトビモンオオエダシャク(鳶紋大枝尺,シャクガ科)の幼虫を自分の鼻につけた男の子がいました.歌舞伎役者のように見えるという声があがりました.大丈夫かと聞いたところ,ちくちくする程度だという回答でした.何齢かをどうやって判定できるかという問いに,脱皮数を数えるのが最も正確という回答でした.
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スイレンの白色と緑色の茎 |
トビモンオオエダシャクをの鼻につけた男の子 |
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10時10分になって,やっと出発して,大坂池の南側へ行きました.泥道についた足跡が何の動物かという質問がありました.馬だという子供もいましたが,多分,犬だろうということになりました.ここで,背丈より高く繁茂していたイタドリ(虎杖,タデ科)の大きな葉の端でカシルリオトシブミ(樫瑠璃落文,オトシブミ科)を見つけました.大きな葉の片側を数mm幅で5cmくらい切ってから中に卵を産んで巻いて下に落とすオトシブミでした.巻いている途中のものを2匹観察しました.虫の大きさを考えると,人間にたとえると六畳くらいのカーペットを巻くようなものだという人がいました.
大坂池の北側に回り,ミヤコイバラ(都薔薇,バラ科)の葉についたヒメクロオトシブミ(姫黒落文,オトシブミ科)を観察しました.小さな葉の根元近くを両側から切り,主脈を残して,葉全体を丸めていました.ヒメクロオトシブミは,巻いたものを下には落とさず,枝についたままでした.10以上ついていたので,1つだけとって葉を巻き戻して中の卵を観察しようとしました.しかし,卵は小さすぎて肉眼では見つけることはできませんでした.
直ぐ横のクワ(桑,クワ科)に実がついており,皆でとって食べました.黒くなっているのはなく,まだ赤いのを食べたので,それほど甘くなかったようでした.今年は実が少ないという感想がでました.クワの左下の湿地にはセリ(芹,セリ科)がたくさんあり,その中でムギワラトンボ(麦藁蜻蛉,トンボ科)が1匹水面すれすれでじっとしていました.
大坂池の土手のウメモドキ(梅擬,モチノキ科)には3mm径くらいの小さな花がたくさん咲いていました.葉が小さく,最初はウメモドキとは分かりませんでした.周辺でアオバハゴロモ(青羽羽衣,アオバハゴロモ科)の幼虫を捕まえて観察しました.蝉の仲間という説明でした.土手のモモ(桃,バラ科)の木には3cm径くらいの小さな緑色の実が既に付いていました.11時になっても,まだ大坂池近くにいて,急いで水田に向かって歩き始めました.
途中で,ミヤコイバラやサワフタギ(沢蓋木,ハイノキ科)に巻き付いたスイカズラ(吸葛,スイカズラ科)を見つけました.3cm長くらいのラッパ状の白と黄(金)色の花が付いていました.別名が金銀花と言われるように,最初白くて,黄色に変化するものです.蜜が甘いということで,花をとって吸ってみた参加者がいましたが,それ程甘くなかったようでした.スイカズラの名称は「吸い葛」から来ているという説明でした.ミヤコイバラには1つだけ白い花が残っていました.直ぐ横のサワフタギには,緑色の実がたくさん付いていました.コナラ(木楢,ブナ科)の葉についていたオオヤママイマイ(大山舞舞,ドクガ科)の赤っぽい毛虫を見つけて観察しました.また,葉の上に4cm長くらいのナナフシモドキ(七節擬,ナナフシ科)も2匹,じっとしていました.コナラには小さなドングリがもうついていました.近くの背丈の小さなアベマキの葉には,赤い虫こぶ(クヌギハヒメツボタマフシ)が付いていました.
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スイカズラ |
オオヤママイマイ |
アベマキのクヌギハヒメツボタマフシ |
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道の逆側には,ヒメジョオン(姫女苑,キク科)とオオアレチノギク(大荒地野菊,キク科)が群生していました.水田近くの湿地に行きガマ(蒲,ガマ科)を2本切り出し,その穂を観察しました.上部が雄花で,下側が雌花という説明があり,穂を負折って断面も観察しました.雄花が2段階で先に咲いて花粉を飛ばし,その後,雌花が咲くそうです.風媒花ですが自家受粉ではないということでした.蒲団(ふとん)は,蒲の穂絮(ほわた)を入れたことからこのように書くという説明がありました.
炭焼広場に行き,上手に作られたカボチャ(南瓜,ウリ科)の水平棚をまず見ました.サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科),コンニャク(婚約芋,サトイモ科),タデ(蓼,タデ科)およびタカノツメ(鷹の爪,ウコギ科)が畑に植えられていました.タデとタカノツメを逆だと思って苗を植えた人がいました.ここで,子供達がオカダンゴムシ(丘団子虫,オカダンゴムシ科)を見つけて騒いでいました.オカダンゴムシは,昆虫ではなく海老や蟹の仲間でゆでると赤くなるという説明がありました.
水田に行く途中で,食べられますがうまくないと言われているヘビイチゴ(蛇苺,バラ科)の赤い実がたくさんありました.水田は,6月4日に子供達が田植えをしたそうです.確かに泥の中に足跡がたくさんついていました.
林の端に新しいクマザサ(熊笹,イネ科)の葉と,昨年の周縁が枯れたものが混在していました.クマザサの葉は,周縁が枯れているのをよく見ますが,最初は葉の全面が緑であることがよく分かる光景でした.このとき,キビタキ(黄鶲,ヒタキ科)の特徴あるさえずりを聞きました.この時期に,さえずっているということは,既に平和公園で営巣している可能性が高く,秋には幼鳥が見られそうです.直ぐ頭上にいるようにはっきりとさえずりが聞こえても,葉が邪魔で姿を見ることはできませんでした.
ムラサキシキブ(紫式部,クマツヅラ科)が,小さな薄紫色の花をたくさん付けているのを観察しているときに,子供が虫を見つけたといって呼びにきたので,戻って観察しました.ザトウムシ(座頭虫,ザトウムシ目)でした.さらに近くで,アワフキムシ(泡吹虫,アワフキムシ科)の泡を見つけたので,子供達に少しずつ泡を指先ではがさせて,中の5mm大のアワフキムシの成虫を見つけ出しました.コムラサキ(小紫蝶,タテハチョウ科)を捕まえた参加者もおり,観察瓶に入れて観察しました.表面はオレンジ色の模様でしたが,方向によっては一部がきれいな紫色に見えました.写真にはうまく写りそうにありませんでした.
ニワウルシ(庭漆,ニガキ科)の羽状複葉の先端の葉の形が葉によって違うことを見つけた参加者がいました.ネズミモチ(鼠黐,モクセイ科)には白い花と花芽がたくさんついていました.グンバイナズナ(軍配薺,アブラナ科)が群生している近くで,また,キビタキのさえずりが聞こえました.
「子供どんぐりの森」を突っ切って登りの藪こぎをしてキラニン広場へ行きました.途中には,チジミザサ(縮笹,イネ科)が足下に群生していました.ネジキ(捩木,ツツジ科)の白い花もわずかに残っていました.キラニン広場の端でアルファルトの上に這い出している実のついたハイネズ(這杜松,ヒノキ科)がありました.また,アスファルトの上で白いボロの羽のウスキツバメエダシャク(薄黄燕枝,シャクガ科)を観察しました.キラニン広場端のシャシャンボ(小々ん坊,ツツジ科)には花芽と新芽が付いていました.
キラニン広場から下りの藪こぎをして,ササユリ(笹百合,ユリ科)のきれいな7〜8輪の花を観察しました.昨年は1輪しか見つけられませんでしたので,参加者は皆喜んでいました.
ハンノキ池は満水でした.周辺には,半纏の形の葉をしたハンテンボク(半纏木,モクレン科ユリノキ属)が数本ありました.先月に黄色い花が咲いていたのを見た参加者がいました.独特の葉の形をしたヤマウコギ(山五加,ウコギ科)も池の周辺にたくさんありました.ヒメヤブラン(姫藪蘭,ユリ科)も花は咲いていませんでしたがありました.池の横の階段を覆うように大きなゴンズイ(権萃,ミツバウツギ科)がありました.ユーカリ畑の横のモミジバフウ(紅葉葉楓,マンサク科,別名:アメリカフウ)とトチノキ(栃,トチノキ科)には,緑の実が付いていました.ユーカリ畑の横を通って南へ向い里山の家に戻りました.途中でムラサキシキブを観察して葉の裏でイチモンジカメノコハムシ(一文字亀子葉虫,ハムシ科)の幼虫を見つけました.ここで見つけたウメモドキは,大坂池のものとは違い,葉は普通の大きさでした.この場所のヤマウコギには黒い実が付いていました.イボタノキ(疣取木,モクセイ科)は 花殻だけが残っていました.ガマズミ(莢迷,ズイカズラ科)とミヤマガマズミ(深山莢迷,スイカズラ科)も並んでありました.ミヤマガマズミの葉は,濃い照りがあり,普通のガマズミの葉とは違っていました.
石段を降って,里山の家に着いたのは12時20分でした.里山の家の中で,椅子に座って感想会をしました.オオヤママイマイやササユリを観察できてよかった,あるいはクローバーから名古屋ではじめての外来種の象虫を見つけられてうれしいという感想がでました.子供達からは,「食べたものがうまくなかった」とか「おもしろいものはなかった」という感想も出ましたが,結構楽しんでいました.わき出るような生き物を楽しんだ6月の観察会になりました.
観察項目:タイワンタケクマバチとクマバチの標本,ムネアカセンチコガネ,キエダシャク,スイレンの茎,トビモンオオエダシャク,カシルリオトシブミ,イタドリ,ヒメクロオトシブミ,ミヤコイバラ,ガマの穂,スイカズラ,クワの実,ウメモドキ,アオバハゴロモの幼虫,オオヤママイマイ,コムラサキ,モンキチョウ,サワフタギ,ナナフシモドキ,ヒゲナガガ,カラタチ,クマザサ,カボチャ,コンニャク,タデ,タカノツメ,オカダンゴムシ,ササユリ,アワフキムシ,ニワウルシ,チジミザサ,ハンテンボク,ウスキツバメエダシャク,ツバメ,キビタキの鳴き声,イチモンジカメノコハムシの幼虫,ムラサキシキブ
文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子
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