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2011年 > 7月度の観察記録
7月度の観察記録
2011年7月度の観察記録です。

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 いつもの筆者が,海外出張のため,田畑恭子さん(文)と岩田達明さん(写真)からいただいた資料を基に編集しました.参加者は,夏なので子供達が10名と多く,大人は26名でした.

 いつもの集合場所で,参加者が持ってきたものを観察しました.まず,クロメンガタスズメ(黒面形雀,スズメガ科)の幼虫を観察しました.2日前に持参者の畑の土の上を這っていたそうです.図鑑によると食草は,ゴマ(胡麻,ゴマ科),ナス(茄子,ナス科),トマト(蕃茄(ばんか)または赤茄子(あかなす),ナス科),キササゲ(木大角豆,ノウゼンカズラ科)とあり,持参者の畑にはナスもあるそうで,それを食べていたかもしれないとのことでした.大きさから推して,もう蛹(さなぎ)になろうとしているのでは,との意見が出て,容器に土を入れて里山の家に置いておきました.帰って来たら,予想通り土にもぐっていました.3〜4週間で羽化するはずなので里山の家で保管してもらい様子をみることにしました.

クロメンガタスズメの幼虫
クロメンガタスズメの幼虫

 次に,ゆでたトウモロコシ(玉蜀黍,イネ科)の中に入っていた蛹が話題になりました.トウモロコシの害虫としてはアワノメイガ(粟野螟蛾,メイガ科)が有名なので,それではないか,との持参者の推測でした.先月の記録を見ながら,先月の観察会で観察した白い綿のようなものをつけた幼虫はアオバハゴロモ(青羽羽衣,アオバハゴロマ科)としていましたが,その後の調べでクワキジラミ(桑木虱,キジラミ科)の幼虫と判明したことが報告されました. 里山の家のすぐそばのケヤキ(欅,ニレ科)のはがれかけた樹皮を子供がめくって,ハムシ(葉虫,ハムシ科)の仲間の蛹と幼虫を見つけました.

ゆでたトウモロコシの中に入っていた蛹 ハムシの蛹と幼虫
ゆでたトウモロコシの中に入っていた蛹 ハムシの蛹と幼虫

 里山の家を出発してカエル池で,ヤゴ,アメリカザリガニ(亜米利加喇蛄,アメリカザリガニ科),マツモムシ(松藻虫,マツモムシ科)の幼虫,フウセンムシ(風船虫,ミズムシ科, 別名:コミズムシ(小水虫)),アメンボ(水馬,アメンボ科)を網ですくって捕獲しました.マツモムシは他の生きものの体液を吸って生活するので,素手で捕まえると刺されることもあるので注意が必要との説明を聞きました.池の端に沿って生えているものも観察しました.まず,ミコシガヤ(神輿茅,カヤツリグサ科)を観察して,茎の断面の形はカヤツリソウ(蚊帳吊草,カヤツリグサ科)のようなはっきりとした三角形ではなく,角の丸い緩やかな三角形をしているのが手ざわりで確認できました.

ヤゴ マツモムシの幼虫 ミコシガヤの花
ヤゴ マツモムシの幼虫 ミコシガヤの花

 オタマジャクシ池までの間に,セリ(芹,セリ科)の茎にとまっているキアゲハ(黄揚羽,アゲハチョウ科)の前蛹を観察しました.すぐ近くに別の植物にとまっている前蛹もあり,あまりに目立ちすぎるので寄生バチに寄生されているだろう,とか,鳥に見つかりやすいのでは,との意見が出ました.翌日蛹になった写真が送られてきました.

セリの花 キアゲハの前蛹 キアゲハの蛹
セリの花 キアゲハの前蛹 キアゲハの蛹(翌日)

 チョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)とオオシオカラトンボ(大塩辛蜻蛉,トンボ科)を観察しました.ここで,トンボの交尾の説明を聞きました.オスがおしりの先端でメスの頭の後ろをつかみ,予めオスが自分の胸の部分に蓄えた精子にメスが生殖器を伸ばして受け取るので輪のようにつながった形になるとのことでした.交尾後,メスが産卵する傍らで,オスが感謝の気持ちでそれを見守る,との説明のくだりで,ある参加者から,オスには感謝の気持ちなどなく,ただ他のオスに自分の遺伝子を受け取ったメスを奪われないように見張っているだけでは,との指摘がありました.交尾後にメスの生殖器にオスが蓋をして他のオスの遺伝子の侵入を防ぎますが,その蓋をとってしまうメスもいるとのことでした.
 オタマジャクシ池の奥でハンゲショウ(半夏生または半化粧,ドクダミ科)を観察しました.今年,草刈りをした後に育ったもののようで丈が低く,今後大事にしていきたいとの意見が出ました.
 中道を進む途中でアキノノゲシ(秋の野芥子,キク科)を観察し,スズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)とも出会いました.

チョウトンボ オオシオカラトンボ ハンゲショウ
チョウトンボ オオシオカラトンボ ハンゲショウ

 別のグループの親子連れがサツマイモ(薩摩芋,ナス科)の植え付けとジャガイモ掘りをしていました.そこで,ジャガイモ(馬鈴薯,ナス科)を1本借りて観察しました.葉に卵がたくさん産みつけられていました.ジャガイモの害虫であるニジュウヤホシテントウ(二十八星瓢虫,テントウムシ科)の卵と思われます.また,ジャガイモを種から育てて品種改良に取り組んだバーバンク(Burbank)のエピソードが紹介されました.

【外部リンク】ラシット・バーバンク(ジャガイモ博物館)

いも掘りイベントの様子 ジャガイモの花 ジャガイモ ニジュウヤホシテントウの卵
いも掘りイベントの様子 ジャガイモの花 ジャガイモ ニジュウヤホシテントウの卵

 ここで,子どもがナナフシモドキ(七節擬,ナナフシ科)を見つけて持ってきました.大きさを測ってみると92ミリありました.頭,胸,腹に分けてその比率を人間と比べると,この昆虫はずいぶん胸の部分が長いという感想が出ました.ジャガイモについていた卵を観察した場所のすぐそばのノイバラ(野茨,バラ科)に虫こぶを発見しました.中を開いてみると長さ1ミリほどの幼虫が5室ほどに分かれて1室に1匹ずつ入っていました.ルーペで見ると幼虫には足がないようでした.ノイバラの虫えいとしてはバラハタマフシ(薔薇葉玉五倍子)が有名なようです.
 田んぼまでの道すがらヒルガオ(昼顔,ヒルガオ科),シンジュ(神樹,ニガキ科)の花およびマメコガネ(豆黄金,コガネムシ科)の交尾を観察しました.写真をとった他にも交尾しているペアが観察できました.

ナナフシモドキ ノイバラの虫えい 交尾中のマメコガネ
ナナフシモドキ ノイバラの虫えい 交尾中のマメコガネ

 11時頃に田んぼに到着して,水分補給をしつつ小休憩をとりました.日陰に入ると少し暑さがしのげました.モウセンゴケ(毛氈苔,モウセンゴケ科)の花,セグロセキレイ(背黒鶺鴒,セキレイ科),ナガサキアゲハ(長崎揚羽,アゲハチョウ科),モンシロチョウ(紋白蝶,シロチョウ科)などを見ました.キビタキ(黄鶲,ヒタキ科)の声も聞きました.このとき,誰が始めたのか,ひと息ついた頃からポンポンという音が聞こえてきました.クズ(葛,マメ科)の葉で遊ぶクズ鉄砲を大人に教えられて,子どもたちが次々と鳴らしていました.閉じ込めた空気が葉を突き破る時に音が出るので,手のひらがある程度大きくないと良い音が出ないとの意見が出ました.うまく音が出た葉は中ほどに穴があいていました.中には力いっぱい鳴らし続けて手のひらが真っ赤になってしまった子供もいました.

クズ鉄砲で穴のあいたクズの葉
クズ鉄砲で穴のあいたクズの葉

 最初に田んぼの水の中に手を入れました.「湯加減をみてください」との声かけに笑い声が起きました.田んぼの水は本当にお湯のように温かく,こんなに高い温度はイネ(稲,イネ科)には良くないのでは,との意見も出ました.ウンカ(浮塵子,ウンカ科),ガガンボ(大蚊,ガガンボ科)の幼虫,アカムシ(赤虫揺蚊,ユスリカ科)の幼虫,ヒメガムシ(姫牙虫,ガムシ科),サカマキガイ(逆巻貝,サカマキガイ科)を観察しました.最初,ヒメモノアラガイ(姫物洗貝,アラガイ科)との説明でしたが,観察すると貝の巻き方が左巻きだったので,サカマキガイとわかりました.サカマキガイは外来種ですが,稲の生長を阻害するコナギ(子水葱,ミズアオイ科)を食べてくれるので,コナギ駆除の目的からこの貝を田んぼに入れる農家もあるそうです.なお,この田んぼの貝は人為的に入れたものではないとのことでした.

ガガンボの幼虫とサカマキガイ ヒメガムシ サカマキガイ
ガガンボの幼虫とサカマキガイ ヒメガムシ サカマキガイ

 里山の家への帰り道で,ヨコヅナサシガメ(横綱刺亀,サシガメ科)を観察しました.キリギリス(蟋蟀,キリギリス科)の大きな鳴き声を聞きながら中道を戻り,12時過ぎに里山の家に到着して,感想会をしました.感想会で,暑い日でしたが,普段冷房の中に入っている生活に馴れた身体にとっては,今日のように汗をたくさん出すと,息絶え絶えになりそうながらも,どこか毒が抜けて行くようで気持ちよさも感じたとの意見が出ました.厳しい暑さのせいで,森の中の涼しさが逆に際立って感じられた7月の観察会でした.

ヨコヅナサシガメ
ヨコヅナサシガメ

観察項目:クロメンガタスズメ,アワノメイガ?,クワキジラミ(の写真),ハムシの幼虫と蛹,ヤゴ,アメリカザリガニ,マツモムシ,フウセンムシ,アメンボ,ミコシガヤ,チョウトンボ,オオシオカラトンボ,セリ,キアゲハの前蛹,ハンゲショウ,アキノノゲシ,スズメバチ,ジャガイモ,ニジュウヤホシテントウの卵,ナナフシモドキ,ノイバラ,ノイバラの虫えい,マメコガネ,シンジュの花,ヒルガオ,モウセンゴケの花,セグロセキレイ,キビタキ(声),ナガサキアゲハ,モンシロチョウ,クズ,ウンカ,ガガンボの幼虫,アカムシ,サカマキガイ,ヒメガムシ,ヨコヅナサシガメ,キリギリス(声)

文・編集:田畑恭子・伊藤義人,写真:岩田達明

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2011-8-21 288

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