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2011年 > 8月度の観察記録
8月度の観察記録
2011年8月度の観察記録です。

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汗だくで歩く真夏の陽差しの強い日になりました.新池は,スイレン(睡蓮,スイレン科)と藻でほとんどの水面が覆われていました.北側の土手の樹木にはクズ(葛,マメ科)がまとわりつき樹形が分からなくなっていました.センダン(栴檀,センダン科)は,緑色の実をたくさんつけていました.ムクゲ(木槿,アオイ科)やサルスベリ(百日紅,ミソハギ科)はピンク色と白色の花をたくさんつけていました.アカメガシワ(赤芽柏,トウダイグサ科)の雌木には黒い実がついていました.新池周辺ではクマゼミ(熊蝉,セミ科)の合唱でした.今回は,最少参加人数になるのではと言っていましたが,子供5人と大人14人で,いつもの年の8月と変わりませんでした.

クズと新池の樹木 ムクゲの花 サルスベリ アカメガシワの実

外があまりに暑いので,冷房の効いた里山の家の中で集合しました.まず,先月のクロメンガタスズメ(黒面形雀,スズメガ科)の標本を見ました.背中の模様がお面のように見えるので,この名前があるそうです.幼虫はナス科植物を食べるそうです.

【外部リンク】クロメンガタスズメ、決死の蜂蜜強盗(奈良市北部・高の原の昆虫)

クロメンガタスズメの標本

次に,ある参加者が自宅から持ってきた黄色が混じった橙色になったニガウリ(苦瓜,ウリ科,別名:ゴーヤ)の実を観察しました.実が緑にならずに白色から橙色になったそうで,壁の色などのために緑にならなかったのではということでした.というのは,このニガウリの種は学校からもらってきたもので,実は緑色のものだったそうです.最近は,白い種類のゴーヤも売られているということを言う人もいました.橙色はカレチノイドで,緑はクロロフィルの色ですが,緑色の実も成熟すると最後は赤くなるそうです.結局,今回は白い種類で,成熟して橙色になったのだとういうことになりました.実を割ってみると赤い種が入っていました.
なめたらという人がいて,数名が試してみて,甘いという感想がでました.関連して,北海道北見のF1(一代雑種)のタマネギ(玉葱,ユリ科),純白のカボチャ(伯爵),種なしスイカ(3倍体)などの話も出ました.

ニガウリの種


山へ遊びに行ってハイマツ(這松,マツ科)の実を持ってきた人もいました.表面が食べられた実もあり,これは雷鳥の食痕という説明でした.
ここまでで10時20分になってしまい,涼しい部屋を出て,大坂池に向かいました.

ハイマツの実

大坂池の南側で,先月と同じように葉の縁を喰われたクズ(葛,マメ科)を観察して,白っぽいコフキゾウムシ(粉吹象虫,ゾウムシ科)を数匹見つけました.ショウリョウバッタ(精霊飛蝗,バッタ科)やその他のバッタもたくさんいました.一部のクズの葉が裏側を見せており,光を避けるために葉柄の根元に特殊な細胞群があり葉の向きを調整しているという説明がありました.夜になると元に戻るそうです.オジギソウ(御辞儀草,マメ科)は接触によって葉が動きますが,クズは光量調節をして光合成の効率を考えているようです.
クズの花をとり,においをかいで,ファンタグレープのにおいという感想が出ました.旗弁(きべん),舟弁(しゅうべん,別称:竜骨弁),翼弁(よくべん)などのマメ科の花の特徴の説明がありました.米国へ外来種としてクズ(Kudzu)が入り込み,エイリアンプランツとして嫌われているようです.

【外部リンク】マメ科の蝶形花冠(のこのこ このこ)

【外部リンク】米国の葛の話(極東ブログ)

光を避けるクズの葉 コフキゾウムシとクズの葉

湿地に入る手前で,葉がほとんど喰われているシンジュ(神樹,ニガキ科,別名:ニワウルシ)を見つけました.木の名前は,英名のtree of heaven から来ているという説明がありました.
湿地で,シロバナサクラタデ(白花桜蓼,タデ科)の白い清楚な花を観察して,おしべの数を数えました.
長いおしべは4本や5本という声も出ましたが,結局6本ということになりました.HP では8本という記述もありました.紫色の花をつけたミソハギ(禊萩,ミソハギ科)も周辺にありました.

【外部リンク】シロバナサクラタデ(荒川堤と水田の花)

シロバナサクラタデの花 ミソハギ

水田の稲の葉がかなり虫に食われていました.ピアスのように透明な糸の先端に模様のついた俵状の数mm大の繭を見つけました.ホウネンタワラチビアメバチ(豊年俵禿飴蜂,ヒメバチ科)の繭でした.すっかり忘れていましたが,2007年10月の観察会報告でも取り上げていました.稲の代表的な害虫であるメイガ(螟蛾,メイガ科)の幼虫も見つけて,稲の葉の食痕も観察しました.若齢の時は葉の表面だけを食べ,大きくなると葉の縁から食べるという特徴がよく分かりました.

ホウネンタワラチビアメバチの繭 メイガの幼虫と食痕

幹から樹液が出ているアベマキ(阿部槇または?,ブナ科)を観察して,スズメバチ(雀蜂,スズメバチ科)がいるのを見つけました.カブトムシ(甲虫または兜虫,コガネムシ科)はいませんでした.ここで,2 種のポイズンリムーバー(Poisson Remover,毒抜き)が回覧されました.特殊な弁とピストンがついた透明なプラスチック筒のようなもので,スズメバチや蛇の毒を吸い出す装置でした.試して見て,皮膚がかなり吸い出されるのを観察しました.3,000 円程度のもので,外国製でした.内部気圧は750mb程度になると書いてありました.

アベマキについたスズメバチ ポイズンリムーバー

湿地で,コバノギボシ(小葉擬宝珠,ユリ科),ヌマトラノオ(沼虎尾,サクラソウ科)およぴサギソウ(鷺草,ラン科)を観察しました.サギソウの白い花は32個ありました.誰か湿地に入って花を盗っていったのではないかと思われる足跡がありました.シラタマホシクサ(白玉星草,ホシクサ科,別名:コンペイトウグサ)も見つけましたが,まだ花は非常に小さく,白玉というよりは点にしか見えませんでした.

コバノギボシ ヌマトラノオ サギソウ

湿地から戻るときに,アズキナシ(小豆梨,バラ科)とムクノキ(椋木,ニレ科)を観察しました.ムクノキには緑色の実がついていました.どうやって実を食べるかを聞いた参加者もいました.キリ(桐,ゴマノハグサ科)とシンジュも近くで観察しました.

アズキナシ ムクノキ

炭焼広場へ行き,畑を観察しました.サトイモ(里芋,サトイモ科)の根元に藁(わら)が敷いてありましたが,これは里芋がしめった場所を好むからという説明がありました.サトイモは,ミズバショウ(水芭蕉,サトイモ科)の仲間で,サツマイモ(薩摩芋,ヒルガオ科)は,アサガオ(朝顔,ヒルガオ科)の仲間だという説明がありました.棚のカボチャ(南瓜,ウリ科)は既に収穫した後でしたが,1つだけ細長いカボチャの実が残っていました.別の親子のグループが芋掘りに来たそうですが,まだ収穫には早すぎるので,ソバ(蕎麦,タデ科)の種を蒔いてもらって水やりをしたそうです.ソバは90日以内で実るので,稲作が凶作だと分かった段階でも,そばを作ることは可能だという説明がありました.コナラ(木楢,ブナ科)の小さなドングリも観察しました.

炭焼広場 コナラ

大坂池に戻り,まずフウセンムシ(風船虫,ミズムシ科)を見つけました.その後,排水口の近くで,水に浮いた大量のウシガエル(牛蛙,アカガエル科)の尾芽期の卵塊を見つけました.男の子にバケツで取らせました.観察するのかと思ったら,土手に捨てていました.外来種なので駆除をするためでした.一部は,里山の家に持ち帰り観察しました.池の水は生ぬいものでした.
ツバメ(燕,ツバメ科)とチョウトンボ(蝶蜻蛉,トンボ科)が水面の水を上手に飲んでいました.大坂池の土手には,アレチカワラケツメイ(荒地河原決明,マメ科)が小さい黄色い花を咲かせていました.ここで,男の子がガマ(蒲,ガマ科)の穂を飛ばして父親に投げていました.ガマの種が周辺をたくさん舞いました.

ウシガエル)の卵(尾芽期) アレチカワラケツメイ

感想会は,集合時と同じく冷房の効いた里山の家の中で行いました.クズが光量を調節するために,葉の向きを変えていることに驚いたという感想がでました.子供達は,感想会だけでなく観察会中ずっと元気で走り回って,暑さとは関係ないようでした.
酷暑の観察会で,多くの生き物に触れた観察会になりました.

観察項目:ニガウリ,ハイマツの食痕,クロメンガタスズメの標本,コフキゾウムシ,クズの葉と花,ハッカの花,カラスウリの花殻,ヤママユガの繭,シンジュ,シロバナサクラタデ,ハエのさなぎ,ホウネンタワラチビアメバチの繭,メイガの幼虫,スズメバチ,ポイズンリムーバー,サギソウの花,ムクノキ,ヌマトラノオ,シラタマホシクサ,ワレモコウ,カボチャ,サトイモ,ソバ畑,フウセンムシ,ウシガエルの卵塊,アレチカワラケツメイ

文・写真:伊藤義人 監修:滝川正子

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2012-1-3 277

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