2022年 6月 12日(日)9:30〜12:15 作成:田畑恭子 監修:瀧川正子 久しぶりに大勢の参加者を迎えて、里山の家は早くから大賑わいでした。前日の雨は明け方まで続き梅雨入り間近と思われましたが、貴重な晴れ間の広がる中、気持ちのいい時間をみなさんと共有することができました。 里の道を進みました。イボタノキの葉にはいろいろな食痕が見られましたが、食べている昆虫は見つけられませんでした。イネ科の植物の葉の裏にはキマダラカメムシのものと思われる卵が産みつけられていました。肉眼では難しいのですが写真を拡大すると並んだ卵の隙間から黒いものが見られ、これは親から子へと受け渡される「共生菌」のカプセルと紹介されました。またこの日は昼間に活動するガの仲間、カノコガが何度も見かけられました。コムラサキの花が咲き始めていて、匂いを確かめるとほんのりと優しい香りが感じられました。
里の道沿いにはイモカタバミが群生しているところがありますが、この日はその名の由来となっている根を掘ってみることにしました。3株ほどを掘り、どれも根が芋状になっていることがわかりました。近くにオッタチカタバミが咲いていたので、同じく掘ってみましたが、こちらは芋と呼べるような根ではなく、小さな豆粒状になっているのが確認できた程度でした。少し進んだところにムラサキカタバミも見つかり、この根を確認すると球根状になっていました。
イモカタバミの葉を使って10円玉をこすると、サビが取れてピカピカになるのをみんなで実験してみました。カタバミの仲間は葉にシュウ酸が含まれているので、その働きでサビが取れるとのことでした。
参加者の大学生が、大きなトビズムカデを捕まえました。初めて間近で見た子どもたちは大きな声を上げてはしゃいでいました。スズコナリヒラタケのタケノコが竹林からはみ出していくつも頭を出していました。この森で竹林の整備をしている参加者から、簡単に折れるタケノコのうちに退治すると手間が省けると聞き、多くの参加者が次々と蹴り倒していきました。エノキの木の下で、葉の主脈は3本のものがほとんどで、付け根から半分くらいには鋸歯がなく、葉先に近い部分にあると説明があり、実際に葉を観察して確かめました。
クサカゲロウの仲間を捕らえた参加者の女の子は金属光沢を放つ複眼に見入っていました。いぶし銀のビーズのようでした。少し離れた場所で参加者の青年がコクワガタを捕らえて見せてくれました。小さなオスで、大顎が小ぶりなので一見メスと間違えそうでした。目の前のコナラの幹を見るとキマワリが歩いていました。
田んぼに出て生きもの探しをしました。2週間ほど前に田植えが済んだばかりですが、イネが一回り大きく育っていました。よく見るとその葉には小さなゾウムシが多数とまっていました。イネの害虫のイネミズゾウムシで、一人5頭捕まえて、と声をかけられた子どもたちは次々と捕まえ始め、50頭ほどが15分ほどの間に集まりました。この数字からここにはこの虫が無限に発生していると言えると言う人もいました。水路で水網を使って生きもの探しをしていた青年はヌマガエルとハイイロゲンゴロウをみつけました。
あちこちで今年のオタマジャクシが上陸したと思われる小さなニホンアカガエルがはねていて、子どもたちが夢中で追いかけていました。昆虫好きの青年がオオスズメバチの女王バチを捕らえると、大人も子どもも興味津々の様子でケースをのぞき込んでいました。女王バチは自分が命を落とすと子孫を残せないため、人に対して攻撃してくることはめったにないというその青年の説明が印象に残りました。田んぼの脇のヤブガラシに黒いイモムシがついているのを子どもの参加者が見つけました。セスジスズメの幼虫でした。ヤブガラシはセスジスズメの幼虫の食草ですが、そこにはあまり葉が残っておらず、もう少しで食べ尽くされてしまいそうでした。
ヒメギスの成虫を捕まえた参加者がいました。この日はほかにヤブキリの成虫も捕らえられ、先月までの観察会で見かけたたくさんの幼虫はこの日は見られませんでした。季節の移ろいを実感しました。帰り道ではイネ科の植物の葉の裏にシオカラトンボのヤゴの抜け殻がくっついているのを見つけました。水路から中道を横切ってきた位置にあり、羽化のためにヤゴが長い距離を歩いてきたことがわかりました。最後に久しぶりに色よく熟したクワの実をみんなで食べました。触れるとぽろっと落ちるくらいの状態のものが十分熟していると教えられ、子どもも大人も次々と食べていました。
この日は気温も上昇し時折日差しも強くなる晴天でしたが、東海地方ではこの2日後に梅雨入りの発表がありました。森の木も草も雨に濡れ、田んぼのイネも一気に生長していく季節です。これからもそんな生きものたちの姿を観察するのが楽しみです。
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